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コラム

2023.04.18
コラム
【足場】朝顔とは?組み立て方と設置基準、設置単価も紹介
高所作業を安全に行うために、作業者の墜落防止措置は重要です。では、作業者以外への安全対策はどうでしょうか。
高所作業で使用している工具や資材を落としてしまうと、地面に落ちた時のエネルギーはとても大きくなります。

もし落下した物体が人に当たってしまうと大きな事故となるので、高所作業の足場には、作業床の端に幅木と呼ばれる板の設置が義務付けられています。
しかし、幅木だけで落下物事故を防ぐのは難しいでしょう。

万が一の落下物に対する対策が必要です。今回は、仮設足場からの落下物による事故を防止する対応について解説します。

  ▼ 目次
   1.足場の朝顔とは
   2.  足場の朝顔の正式名称
   3.  足場の朝顔の組み立て方
   4.  足場の朝顔の設置基準
   5.足場の朝顔の設置単価
   6.  足場の朝顔を設ける際の注意事項
    6-1.  朝顔の角度に注意する
    6-2.  同一メーカーのセット品を利用する
   7.まとめ


1.足場の朝顔とは


公道や歩道に隣接する高所作業の仮設足場を設ける場合は、落下物による危害を防止するために防護用板の設置が必要です。

この防護用板は足場の外側面にはね出して設置されています。足場から斜め上に広がっているため、
その形が花のアサガオに似ていることから業界用語で「朝顔」と呼ばれています。

2.足場の朝顔の正式名称


朝顔の正式名称は防護棚と言いますが、労働安全衛生規則第537条で「防網」、建築基準法第136条の5では
「鉄網」または「帆布(はんぷ)」との記載もあります。

厚生労働省の「国土交通省の仕様書に基づいた足場等の安全対策」では「防護棚(朝顔)」とも記載されているため、
朝顔で十分に通じます。

3.足場の朝顔の組み立て方


朝顔の組み立て方は次の通りです。

①朝顔の主材と斜材を受ける金具を、足場の建枠に取り付ける

②取り付けた金具に、朝顔の主材とスライド管を取り付ける
※スライド管は朝顔を開閉するために必要な部品です。

③スライド管にアサガオ斜材を取り付ける

④斜材と取り付けた主材の先端にロープを取り付け垂直状態にする
※この取り付けたロープは朝顔を開閉するために必要です。

⑤朝顔が必要となる幅の長さまで、主材と斜材を組み立てる

⑥組み立てた主材の根元にバンノー受けL型を、先端にバンノー受けC型を取り付ける

⑦主材とバンノー受けによってフレーム状の枠ができるので、枠にフレームのフレ止めを取り付ける
※フレ止めは、バンノー鋼板を受けるためにも必要な部材です。

⑧フレームにバンノー鋼板を取り付ける

⑨バンノー鋼板を全て取り付けたら、ロープを緩めて朝顔を倒して角度を調整する

⑩朝顔の角度が決まったら、斜材の吹き上げ防止ピンを取り付ける
※朝顔の下方向への応力については斜材で受けますが、風などで上方向に持ち上がらないように、
忘れずに吹き上げ防止ピンを取り付けてください。

⑪隣り合う主材の間に、隙間がないか確認する
※各部材に隙間がなければ朝顔の完成です。

4.足場の朝顔の設置基準


朝顔の設置基準は建設基準法施行令第136条の5で、工事現場の境界線から水平方向の距離が5m以内、
かつ地盤面から高さ7m以上ある時に設置すると決められています。
そして構造は、国土交通大臣の定める基準に従わなければなりません。

国土交通大臣の定める基準とは、昭和42年に「建設工事等の工事現場における落下物による危害を防止するため
の措置に関する指導基準」として通達されています。

建設工事などの作業する場所が地盤面から10m以上の高さにある場合は、朝顔を少なくとも1段以上設置する必要があります。
さらに、高さが20m以上の場合は、2段以上の朝顔を設置しなければなりません。

落下物を受ける部分についても、板状のもので隙間がないことや、木板の場合は厚さが1.5cm以上、
金属板等その他の材料の場合は、同等以上の効力がある厚さとされています。

取り付け方についても、骨組の外側から水平方向に2m以上突き出させ、角度も水平方向に対して20度以上取らなければなりません。
朝顔の最下段は、工事を行う部分の下10m以内に設置します。

5.足場の朝顔の設置単価


朝顔の設置単価は、2019年時点で1m当たり5,000~5,500円くらいです。
ただし実際には、運搬費用や撤去費用などを含めると、1m当たり13,000~18,000円くらいとも言われています。

単価に朝顔を設置する長さを掛けると、朝顔の費用を計算できます。
例えば、幅10mの範囲に朝顔を設置する場合の費用は、10m×5,500円/m=55,000円または、
10m×18,000円/m=180,000円です。高さが20m以上の場合は2段必要になるので、費用が2倍になります。

また朝顔が公道にはみ出てしまう場合は、道路を管理している自治体に占用料金を支払わなければなりません。
占用料金は、自治体によって単価が違います。

占用料金は、単価と占用面積を掛けて計算します。
例えば、工事場所が千代田区で朝顔が公道に7.8平方メートルはみ出る場合の占用料金は、
17,760円/年×8平方メートル(面積の小数点以下は切り上げ)=142,080円/年です。

朝顔の設置期間が2カ月であれば、142,080円/年÷12カ月×2カ月=23,680円となります。
各単価は変動する場合があるので、設置前に最新の単価を確認しましょう。

6.足場の朝顔を設ける際の注意事項


朝顔の設置基準は法律や通達で決められていますが、実際に設置する場合の注意点を説明します。

6-1.朝顔の角度に注意する



朝顔の設置基準で、水平に対する角度は20度以上必要です。
これだけの情報では、20度以上であれば何度でも良いと解釈できます。

しかし、朝顔の角度を大きく取りすぎると、はね出し寸法が2m以下になってしまうので注意が必要です。
例えば、通常のバンノー鋼板(2,350mm)の場合、角度が20度であれば、はね出し寸法は2,208mmとなり2m以上が確保できます。

しかし角度が35度になってしまうと、はね出し寸法は1,925mmで2m未満となり、はね出し寸法不足です。
朝顔は工事の進捗状況や天候によって開閉させる場合があるため、角度を変化させる場合は、
設置角度とはね出し寸法に注意しましょう。

6-2.同一メーカーのセット品を利用する


朝顔は、各メーカーからセット品が販売されています。朝顔を使用する場合は、同一メーカーのセット品を使用しましょう。
同一メーカーのセットを標準的に組み立てれば、設置基準を満たす朝顔になります。

朝顔を職人が異なるメーカーの資材で、現地で1から組もうとすると、
水平方向へのはね出し寸法や取り付け角度を測りながら組み立てなければなりません。
また隣り合う主材の間に隙間ができる可能性があります。

7.まとめ


朝顔が必要になる工事現場は、敷地境界までの距離が短く、公道に近い状況になっています。
作業中に高所から工具などを落下するようなことがあると、大きな事故につながる可能性があります。

朝顔の特徴を理解し、正しく設置するようにしましょう。
【足場】朝顔とは?組み立て方と設置基準、設置単価も紹介