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コラム

  • 足場の番線とは?締め方とポイントも解説
    建設現場にて足場材の固定などによく使われる番線ですが、
    固定する際の正しい締め方やポイントを知りたい方もいるでしょう。
    番線による足場板などの固定は、高所の足場上で作業する人の命を預かる重要な役割を担っています。

    本記事では、足場の番線の締め方を詳しく解説します。
    番線の適切な締め方を知ることで、安全な足場を設置し、建設現場における事故を防ぎましょう。


    ▼ 目次
     1.足場の番線とは
        2.  足場の番線の太さ
         2-1.  10番線
         2-2.  12番線
         2-3.  21番線(結束線)
       3.  足場の番線の締め方
           3-1.  2本締め
           3-2.  1本締め
       4.  足場の番線を縛る時のポイント
            4-1.  締めつけ過ぎない
           4-2.  足場材の角で絞る
           4-3.  番線同士の交点を輪のある先端に近づける(2本締めの場合)
           4-4.  締めた番線の余った先端は切って処理する
        5.  まとめ


    1.足場の番線とは

     
    番線とは、建設現場で足場などの結束に使用される鉄線のことをいいます。
    番号によって太さが異なることから番線と呼ばれます。
    番線は、焼きなましと呼ばれる方法によって熱処理されており、
    手で簡単に曲げられるほど柔らかいという特徴があります。

    番線は針金に似ていますが、針金よりも加工がしやすいため、
    足場材の緊結や梱包など作業の用途に合わせて幅広く使用されています。
    一方でサビやすい特徴があるため、仕上げ材などの固定には使用されません。
    番線は、太いものほど数字が小さいです。

    必要な強度や加工のしやすさなど、用途によって番線を使い分けることで作業効率をアップさせることができます。
    一般的な足場の作業においては、12番線が多く使用されています。
    通常はメートル単位で円形に束ねられて売られていますが、結束用に切断された状態で販売されているものもあります。

    番線を使用して足場材などを結束する際には「シノ」と呼ばれる工具を使用します。
    コツさえ覚えれば誰でも簡単に結束することができます。


    2.足場の番線の太さ




    建設現場で主に使用される番線は10番、12番、21番です。
    番線の強度や扱いやすさによって用途を使い分けることで作業効率が上がります。
    それぞれの特徴と主な用途を見ていきましょう。

     

    2-1.10番線


    型枠などの結束には、直径約3.2mmの10番線が使われます。
    生コンクリートの型としての役割を担っている型枠には、コンクリート打設時に大きな圧力がかかります。
    そのため、型枠の結束や押し引きに耐えられるよう、一般的12番線よりも少し太い10番線が多く利用されます。


    2-2.12番線


    建設現場で最も多く使われるのが、直径約2.6mmの12番線です。
    10番線より細いため、扱いやすく、一般的な足場材の緊結や荷崩れ防止のための結束に使用されます。


    2-3.21番線(結束線)


    21番線は結束線と呼ばれることが多く、足場の設置には基本的に使われることはありませんが、
    鉄筋の結束などに使用されます。
    直径約0.8mmの針金ほどの細さで、容易に扱えることから鉄筋の配筋作業においてはなくてはならない存在です。

    「ハッカー」と呼ばれる工具を結束線の輪に通して、手首をスナップすることで、鉄筋を縛ることができます。


    3.足場の番線の締め方

     
    足場の番線の締め方は、主に2種類あります。
    番線を絞めつけるために必要な工具は、番線を切るための「番線カッター」と、
    番線を締めつけるための「シノ」だけです。

    番線の締めつけ作業は、足場で作業する作業員の安全を守るための重要な作業の1つです。
    適切な締め方を解説するので、ぜひチェックして現場での事故をなくしましょう。

    3-1.2本締め




    建設現場の足場作業において最も多く使用される番線の締め方が、2本締めです。
    2本締めは、番線を番線カッターで縛りたい材料の幅に合わせてカットし、画像のように半分に折り曲げた部分に輪をつくります。

    この状態で、縛りたい資材同士の周囲に、ぐらつきがないよう最短距離で番線を巻きつけます。
    番線を巻きつけたら、交差させてできるだけ締め付けます。
    締め付けた番線同士を時計回り(左利きの場合は反時計回り)に軽くねじります。

    軽くねじったら輪の中にシノを2cm程差し込み、
    輪になっていない側の番線を巻き込みながら時計回り(左利きの場合は反時計回り)にさらにねじります。
    この際に、輪になっていない番線の先端を左手で固定しながらシノを回すのがポイントです。
    輪を2回転ほどねじると堅固に締めることができます。

    3-2.1本締め


    足場材を2本締めで縛りづらい場合や簡易的に縛りたい場合には、1本締めを使用します。
    1本締めでは、番線を半分に折り曲げずに使用します。
    2本締めの場合と同様に、番線を巻きつけ、交差させて締め上げます。
    交差した番線同士を時計回り(左利きの場合は反時計回り)に軽くねじります。

    ねじった交点にシノを近づけて、ねじり合わさっている番線をシノに巻きつけて輪をつくります。
    左手で番線の先端を固定しながら、右手のシノを時計回り(左利きの場合は逆)に回します。
    輪を2回転ほどねじると堅固に締めることができます。

    4.足場の番線を縛る時のポイント

     
    先述した足場の番線の縛り方には、堅固に締めるための方法や、
    その足場を安全に利用できるようにするためのポイントが4つあります。
    それぞれ解説するので、一緒に見ていきましょう。


    4-1.締めつけ過ぎない


    番線は引張方向の力には強いですが、ねじれには弱いため、締めつけすぎると破断してしまいます。
    そのため、締めつける際は、番線と足場材とのすき間がなくなってから半回転する程度がベストです。

    万が一、破断してしまった場合は、その番線は弱っているため、再利用せずに新しい番線を使用しましょう。

    4-2.足場材の角で絞る


    番線を交差させる交点は足場材の角にすると締め付けやすいです。
    角を利用すると番線と足場材のすき間を減らすことができ、シノを回す回数も少なくて済むため、作業効率が上がります。

    足場材の中央に番線の交点をつくると、足場を利用する作業員がその交点につまずいて転倒したり、
    転倒した勢いで足場から転落したりする恐れがあります。
    これらの理由からも、番線の交点は、角に設けるのがベストです。


    4-3.番線同士の交点を輪のある先端に近づける(2本締めの場合)


    2本締めの場合、足場材に巻きつけた番線同士の交点を、
    輪をつくったあとに2本の番線を交差させた部分に近づけると締め付けやすいです。

    交点を交差部分から遠ざけると足場材と番線との間にすき間が増え、
    番線を回す回数が増えてしまうため、あらかじめ近づけておくのがポイントです。



    4-4.締めた番線の余った先端は切って処理する


    番線を締めたあとに余った先端は短く切って処理しておくことをおすすめします。
    長いまま処理せずにおくと、足場を利用する作業員が番線に引っ掛かり、転倒や足場から転落する恐れがあるためです。

     

    5.まとめ




    今回は足場の番線の締め方について詳しく解説しました。
    足場を組む際に番線を適切に使用することは、足場上での事故を減らすための重要な要素の1つです。
    本記事で説明した番線の適切な締め方と処理方法を参考にすることで、現場での足場を原因とする事故をなくしましょう。
  • 仮設機材に使われる「メッキ」とは?ドブメッキとプレメッキの違いや特徴を解説
    鋼材の表面処理方法の1つにメッキがあります。
    メッキとはどのような処理方法で、どんな効果があるのか気になる方もいるでしょう。
    メッキの効果を知れば、建設資材の材質の検討やコストの削減ができます。

    今回はドブメッキとプレメッキの違いや、それぞれの特徴について解説します。
    本記事でメッキについて知ることで、耐食性やコストを考慮した建設資材の選定が可能になります。


    ▼ 目次
     1.メッキとは何か
       2.  ドブメッキ(溶融亜鉛メッキ)とは
         2-1.  ドブメッキの特徴
           2-2.  ドブメッキの作用
        3.  プレメッキ(高耐食めっき鋼板)とは
         3-1.  プレメッキの特徴と作用
       4.  仮設機材にはどちらが使用されている?
       5.  まとめ


    1.メッキとは何か

     
    メッキとは、金属や非金属の表面に薄い金属の膜を張る加工技術を総称する言葉です。
    メッキと同じく、よく知られた処理方法に塗装があります。
    塗装は塗料を塗膜する表面処理方法であるのに対して、メッキは素材の表面に金属の皮膜を生成する処理を行います。

    メッキは製品に金属特有の光沢を与え、見た目を美しく仕上げます。
    また生成された皮膜によって、劣化やサビ、摩擦の予防効果も期待できます。メッキの由来は、「滅金(めっきん)」にあるといわれています。

    「滅金」とは水銀に金を浸す作業で、水銀で覆われて金がなくなったように見えるため、このように呼ばれていました。
    その後次第に「鍍金(めっき)」と呼ばれるように変化し、現在ではJISで定められた正式な表記は「めっき」となっています。
     
     

    2.ドブメッキ(溶融亜鉛メッキ)とは



    ドブメッキとは表面処理方法の1つで、高温で溶かした亜鉛に鋼材を浸し、表面の亜鉛被膜を形成する方法のことです。
    メッキ槽に鋼材を浸ける様子から「ドブメッキ」のほかに「テンプラメッキ」とも呼ばれています。


    2-1.ドブメッキの特徴


    ドブメッキは、橋梁やプールのドーム、ガードレールなど、さまざまな用途に使用されています。
    そんなドブメッキには以下のメリットがあります。

    ■防錆効果が高い
    ドブメッキの特徴の1つに防錆効果の高さがあります。
    メッキ処理時の電気化学作用によって緻密な保護被膜を形成することで、素材を長期間腐食から守ることができます。
    また、亜鉛皮膜、酸化亜鉛被膜には長期間の耐食性があるだけでなく、犠牲防食作用によって、ピンホールや傷を防食してくれます。

    耐候性は、メッキの厚さに比例して高くなります。
    また、溶融亜鉛メッキ処理された鋼材はコンクリートの中でも防食性を発揮します。
    カルシウムを多く含んでいる打設直後のコンクリートは、強アルカリ環境です。

    溶融亜鉛メッキの表面は強アルカリによって溶解しますが、カルシウムと反応した溶融亜鉛メッキ表面には保護性皮膜が生成されます。
    この保護皮膜のおかげで、アルカリ環境でもほとんど溶解しなくなり、下地の亜鉛被膜を保護します。

    ■コストパフォーマンスが高い
    ドブメッキには、コストに対して高い耐食性が得られるという特徴もあります。
    また、大気中・土壌中・海水中でも、追加の保守工事なしで優れた防食効果が継続するため、ほかの防食方法と比べて経済的です。

    ■密着性が高い
    密着性の高さもドブメッキの特徴です。
    溶融亜鉛メッキ皮膜は、鋼材と亜鉛との合金反応によって密着しているため、塗装と比較すると密着性に優れており、
    衝撃や摩擦によって剥がれることが少ないです。そのため、長期間にわたって素材を保護することができます。

    ■処理にムラがない
    ドブメッキは、溶融亜鉛メッキ槽に鋼材を浸す工法のため、細部に手が届かないような複雑な形状の鋼材にも、
    十分な厚さの均一なメッキ皮膜を作ることができます。そのため、ムラがない美しい仕上がりになります。


    2-2.ドブメッキの作用


    ドブメッキには「保護皮膜作用」や「犠牲防食作用」、「合金層」と呼ばれる作用があります。
    それぞれを詳しく紹介します。

    ■保護皮膜作用
    ドブメッキの作用の1つに「保護皮膜作用」があります。
    「保護皮膜作用」とは、素材と亜鉛の合金が作られることで、
    亜鉛メッキの表面に空気や水を通しにくい亜鉛の酸化皮膜が形成されることをいいます。

    この酸化皮膜は密着性が強く、剥がれ落ちることがありません。
    そのため、溶融亜鉛メッキ処理されたものは、ただの鉄素材と比較して腐食速度が遅くなります。

    ■犠牲防食作用
    亜鉛メッキ表面に薄い酸化亜鉛の皮膜が張られることで、よりサビに強くなります。
    万が一、傷によって素地が露出しても、傷周辺の亜鉛が鉄より先に溶け出して電気化学的に素地を腐食から保護します。
    これを「犠牲防食作用」といい、サビが広がることを防ぐ効果があります。

    ■合金層
    ドブメッキの大きな特徴の1つとしては、「合金層」も挙げられます。「合金層」とは、2つの異なる金属同士の間に発生する層のことです。
    この化学反応によって亜鉛と鉄が強力に結合するため、メッキが剥離しにくくなります。よく比較される塗装に対し、剥がれにくさの面では、溶融亜鉛メッキのほうが優れています。

    3.プレメッキ(高耐食めっき鋼板)とは

     
    プレメッキ(高耐食めっき鋼板)は、ドブメッキよりも優れた耐食性と耐久性を兼ね備えた鋼板です。
    通常の鋼板にアルミニウム、マグネシウム、亜鉛を主成分とする特殊なメッキ層を皮膜させることで、
    屋外環境や水気の多い劣悪な環境でも長期間耐食性を保持できます。

    プレメッキはドブメッキと比べても10倍以上の耐食性があります。
    代表的なプレメッキの製品としてZAM鋼板やエコガル、スーパーダイマなどがあります。

    3-1.プレメッキの特徴と作用


    プレメッキはドブメッキよりも優れた耐食性を持ち、そのほかにも以下のような特徴があります。

    ■ドブメッキよりコストパフォーマンスが高い
    プレメッキはドブメッキと同じ作用を持つだけでなく、ドブメッキに比べて高い耐食性があります。
    通常の鋼板に必要なメッキ処理が不要で、製造にかかる時間やコストを削減できます。

    ■仕上がりがきれい
    プレメッキは、ドブ漬け処理する際にできるダレや溜まりがないため、表面がきれいに仕上がるという特徴があります。
    耐候性が必要で、化粧としてステンレスを使いたいけれどコストオーバーしてしまう場合や、
    スチールにメッキ処理では見た目が気になる場合にはプレメッキの使用が適しています。

    ■導電性に優れている
    電気の流れやすさ(導電性)は金属の種類によって異なります。
    プレメッキに含まれるアルミニウムは導電性に優れており、静電気を逃がしやすい特徴があります。
    電子機器などは静電気によって誤作動を起こすことがあるため、プレメッキは電子機器類と相性が良いといえるでしょう。

    ■アルカリに高い耐性がある
    プレメッキは表面に亜鉛系保護皮膜が形成されており、成分としてマグネシウムやアルミニウムを含んでいます。
    この保護皮膜はアルカリに対して耐性が高く、コンクリートなどのアルカリ成分の浸食を強力に防ぎます。

    4.仮設機材にはどちらが使用されている?



    仮設機材としては、現状はドブメッキのほうが多く使用されています。
    しかし、ZAMやエコガルなどドブメッキよりも耐食性に優れたプレメッキ製品もあります。
    プレメッキの方が仮設機材が長持ちし、安全性も高いです。

    中央ビルト工業の仮設機材も基本はドブメッキを使用していますが、
    幅木やスカイフェンスには高耐食鋼板を使用しています。

    【幅木】
    ・各社くさび緊結式足場(次世代足場)用(φ42.7、48.6兼用)
    ・枠組足場用
    ・折り畳み式(φ42.7、48.6兼用)
    ・アルミスカイガード専用幅木
    ・妻側幅木

    【スカイフェンス(養生枠)】

    ・枠組足場用
    高さ850mm:幅596mm、896mm、1196mm、1496mm、1796mmの5種類
    高さ862mm:幅606mm、910mm、1215mm、1520mm、1824mmの5種類

    ・くさび緊結式足場用
    高さ900mm:幅591mm、891mm、1191mm、1491mm、1791mmの5種類
    高さ900mm:幅601mm、905mm、1210mm、1515mm、1820mmの5種類
    高さ950mm:幅601mm、905mm、1210mm、1515mm、1820mmの5種類


    5.まとめ



    今回はドブメッキとプレメッキの違いやそれぞれの特徴について解説しました。
    鋼材の使用用途や使用される環境によってメッキ処理方法を使い分けることで、安全性の向上やコスト削減につながります。
    本記事を参考に適切なメッキ処理を選定することで、低コストかつ安全性の高い現場を実現しましょう。



  • 足場の耐用年数は?安全性確保のために知っておくべきこと
    建設現場で事故を起こさないためには、安全性の高い足場が必要であるため、
    足場の耐用年数について気になる現場責任者の方も多いでしょう。

    足場の耐用年数を知っておくことで、足場の劣化による事故や災害を未然に防ぐことができます。

    そこで今回は、足場の耐用年数と安全性確保のために必要な知識について紹介します。


    ▼ 目次
     1.足場の耐用年数は決まっている?
        2.  足場板の種類
         2-1.  金属製足場板
         2-2.  木製足場板
       3.  使用できない足場の特徴とは
           3-1.  材料
           3-2.  作業床
         3-3.  足場の組立て等作業主任者
           3-4.  点検
       4.  足場材は必ず認定品を使用する
        5.  まとめ


    1.足場の耐用年数は決まっている?

     
    実は、足場の耐用年数を定めた規定は存在しません。
    とはいえ、いつまでも使い続けて良いわけではないのです。
    組み立てられた足場は、現場によって異なるため足場材1本ごとに不良がないかを点検して、
    安全性を確保する必要があります。

    また国税庁が定める法定耐用年数の表 
    https://www.town.yubetsu.lg.jp/common/img/content/content_20201208_165220.pdf

    によると、足場材は工具の分類の「金属製柱及びカッペ」に該当するため、耐用年数は3年とされています。
    ただし、これはあくまでも目安であるため、足場材に異常がないか日々点検することが重要です。

    労働安全衛生規則において「事業者は、足場の材料については、著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはいけない」と定められています。
    足場材の点検方法は、厚生労働省の「経年仮設機材の管理指針」 にて示されています。

    https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-2h10-0.htm

    基本的には目視にて材料に著しい変形、損傷、さび等がないかを判断します。
    このように定められた指針に沿って点検することで、足場の安全性を確保します。


    2.足場板の種類

     

    足場板は直接荷重を受ける作業床として使用されます。
    足場板は大きく分けて金属製足場板と木製足場板の2種類あり、それぞれ強度や重量が異なります。

    足場の用途や作業性を考慮して、使い分けることで安全性の向上やコスト削減につながるため、
    ぜひチェックしてみてください。

     

    2-1.金属製足場板


    ここでは近年使用する現場が多い金属製足場板の中でも、スチール製足場板とアルミ製足場板の2種類を紹介します。

    ■スチール製足場板
    スチール製足場板は、木製の合板足場板よりもたわみは半分に劣りますが、重量は30%軽いです。
    そのため取り扱い易く、作業性に優れているため、労務コストを削減することができます。

    また、アルミ製足場板と比較するとやや重いですが、強度が高いため、たわみも少ないです。

    ■アルミ製足場板
    アルミ製足場板は、経年劣化による耐久性に優れ、安全性が高いです。
    重量も合板足場板の約半分で、作業性も良いため、近年多くの現場で使用されています。
    また、スチール足場板と比較すると軽いため、労務コストを削減することができます。


    2-2.木製足場板


    木製足場板には、合板足場板と杉足場板の2種類があります。ここではそれぞれの異なる特徴を紹介します。

    ■合板足場板
    合板足場板は、薄板を接着剤で木目に対して直交させて張り合わせており、伸縮しにくいのが特徴です。
    一般的には防腐剤が塗布されており、防腐効果があるため、長く使用することができます。

    滑りにくい加工で安全性が高く、軽量で扱いやすいため、良く使用される足場板です。

    ■杉足場板
    杉足場板は、国産杉材を使用した足場です。滑りにくい素材で柔軟性があり、荷重による振動を軽減してくれます。
    デメリットとしては、温度の変化によって木材が伸縮してしまうことです。

    平均して3年から5年程使用できますが、作業床として命を預かる重要な部材なので、
    強度が弱くなってきたら新しいものに取り替える必要があります。

    3.使用できない足場の特徴とは

     

    労働安全衛生規則は労働者の安全を確保するため、さまざまなルールが定められています。
    足場についてもルールがあり、その基準を満たしていないと足場を利用することができません。
    それぞれ解説するので、足場に関わる方は押さえておきましょう。

    3-1.材料


    労働安全衛生規則の材料について「事業者は、足場の材料については、
    著しい損傷、変形又は腐食のあるものを使用してはいけない」と定められています。
    先述した通り、目視でしっかりと確認することが重要です。

    3-2.作業床


    2mを超える高所で一側足場以外の足場を組む場合にはいくつかのルールが定められています。
    特に注意すべきルールは、「足場の床材間の隙間は、3cm以下にすること」です。

    床材には多少遊びがあるため、使用している間に床材同士の隙間が広がることがあります。
    専用の金具もしくは番線などで固定することをおすすめします。
    これらの基準が満たされていないと足場が使用できないため、注意が必要です。


    3-3.足場の組立て等作業主任者

    労働安全衛生規則では、「足場の組立て等作業主任者技術講習を修了した者のうちから、
    足場の組立て等作業主任者を選任しなければならない」と定められています。

    またその職務として「材料の欠点の有無を点検し、不良品を取り除くこと」や
    「器具、工具、要求性能墜落制止用器具及び保護帽の機能を点検し、不良品を取り除くこと」などがあります。

    これらのルールを心得た足場の組立て等作業主任者を配置することで足場の安全性向上につながるため、
    適切な配置が重要です。


    3-4.点検

    労働安全衛生規則において足場を点検しなければならいタイミングが定められています。
    そのパターンは大きく分けて、「作業により足場を使用する前」と「台風や地震などの後」の2つです。

    台風や地震などの後については、足場の組立て等作業主任者である鳶工にて点検を行います。
    足場を利用する作業の前の点検については鳶工ではなく、足場を使用する工種の作業員にて行うのが一般的です。

    そのため、足場の点検方法は鳶工以外の作業員にもしっかりと周知しておくことが足場での事故を減らす上で重要です。


    4.足場材は必ず認定品を使用する

     
    仮設機材の認定基準に「厚生労働大臣が定める構造規格」があります。
    この基準を満たしていなければ、仮設機材を製造、販売又は貸与することはできません。
    そのため足場材は必ず認定品を使用する必要があります。

    認定品を確認する方法は、仮設材に表記されている仮設工業会認定マークです。
    仮設工業会が労働大臣が定める規格を元に認定基準を設け、その基準に合格した製品に仮設認定合格ラベルを表示しています。

    そのため、このマークが確認できれば安全性の高い規格の足場材と認識することができます。
     

    5.まとめ




    今回は、足場の耐用年数と安全性確保のため知っておくべきことについて解説しました。
    安全性の高い足場を設置するには、作業に適した足場材の選定と日々の足場材の点検が重要です。

    この記事を参考に、足場の耐用年数と安全性確保のために必要な知識を押さえて、足場上での事故や災害ゼロを目指しましょう。
  • 足場の組立費用はいくら?相場価格と単価について紹介
    工事現場で作業を進める上で、足場は欠かせないものです。
    そのような足場を組み立てるのに、どのくらいの費用が掛かるのか気になる現場責任者の方もいると思います。

    今回は足場の組立費用の相場価格と単価について紹介します。
    本記事を参考に適切な足場組立費用の相場を知ることで、不要な経費削減を実現できるでしょう。


    ▼ 目次
     1.足場の組立が必要な3つの理由
         1-1.  作業者の安全管理
         1-2.  品質の確保
         1-3.  近隣への配慮
       2.  足場の種類と各組立費用の単価相場
         2-1.  単管足場
           2-2.  くさび緊結式足場
            2-3.  枠組み足場
            2-4.  吊り足場
            2-5.  次世代足場
        3.  足場費用の計算方法
       4.  足場の組立費用が高くなる場合
       5.  足場の組立費用を安くする方法
           5-1.  複数の業者に見積もりを依頼する
           5-2.  工種毎で必要な足場をできるだけまとめて組む
           5-3.  外壁の仕上げ工事の搬入や取付計画を考慮した足場を計画する
       6.  まとめ


    1.足場の組立が必要な3つの理由

     
    工事現場を進める上で、足場が欠かせないものと前述しました。
    では、どういった理由で足場の組立が必要なのでしょうか。
     

    1-1.作業者の安全管理


    足場を設置する一番の目的は、高所で作業する職人さんの安全を守ることです。
    万が一、高所からの転落・墜落災害があった場合、被災した職人さんの命が危険にさらされます。

    現場で事故が起こると、現場の安全管理が整うまで工事が中断され、工期の延長に繋がります。
    また、現場責任者は安全配慮義務違反として、損害賠償責任を負うケースもあるのです。

    そのため、労働安全衛生規則に記載の通り、高さ2メートル以上での作業を行う場合は、
    足場等の適切な作業床を設けなければなりません。


    1-2.品質の確保


    外壁の作業において、それぞれの工種に合わせた適切な足場を設置していないと、
    施工品質の低下に繋がります。

    特に外壁は、直射日光や雨など外部からの影響を強く受けるため、足場の不備による作業性の低下で、
    漏水や外壁材の剥落などの重大な品質事故を起こす可能性があります。
    そんな品質事故を起こさないためにも、職人さんの作業性を考慮した足場の計画が重要です。

    1-3.近隣への配慮


    工事現場は近隣の方の理解があってこそ進められるため、近隣の方への配慮が必要です。
    特に作業の種類によっては、粉塵や外壁の吹き付け材などが近隣へ飛散する場合があります。

    そこで、組み立てられた足場の周囲をメッシュシートで囲うことで、飛散物が近隣建物に及ぼす影響を防ぎます。
    万が一、足場上でものを落とした際にも、それが外部へ飛散するのを防ぐ役割もあります。

    2.足場の種類と各組立費用の単価相場

     
    足場の組立費用は、1平方メートルあたり800〜1,500円が相場です。
    足場には以下の種類があり、それぞれの組立費用もやや異なります。

    ・単管足場
    ・くさび緊結式足場
    ・枠組み足場
    ・吊り足場
    ・次世代足場


    それぞれの特徴と単価を紹介します。

    2-1.単管足場




    単管足場は、一番シンプルで簡易的な足場です。
    単管パイプとクランプをベースにしているため、形状を変更しやすく、
    隣接地や敷地境界が近い場所でも適応しやすい点が利点です。
    しかし簡易的な組立であるため、他の足場と比べて強度と安全性が劣ります。

    狭いスペースに設置することから、作業員の作業性も落ちることが多く、
    この点がデメリットと言えるでしょう。
    低層の建物に向いており、単価は1平方メートル500円~800円が相場です。


    2-2.くさび緊結式足場




    くさび緊結式足場は、低中層建築などで多く使用されています。
    組立・解体が簡単で、作業性が良いことが特徴です。

    デメリットは組立・解体時のハンマーで打ち込む際に、大きな音が発生し、
    近隣への配慮が必要になることです。
    単価は1平方メートル800円~1,200円が相場です。

    2-3.枠組み足場




    枠組み足場は組立・解体が容易で、中高層の建物など幅広く使用できます。
    他の足場と比べて、幅が広いため、設置にスペースが必要です。
    単価は1平方メートル1,000円~1,500円が相場です。

    2-4.吊り足場




    吊り足場は地上から足場を組むのが困難な場合に、吊り下げて設置する足場です。
    高層マンション・橋などの高所作業で使われます。
    高層建築で時間短縮作業をするには有効ですが、落下対策など、難易度の高い安全性が求められます。
    単価は1平方メートル3,500円~が相場です。


    2-5.次世代足場




    次世代足場は「単管足場」・「くさび緊結式足場」・「枠組み足場」の規格を見つめ直すことで生まれた足場です。
    近年では、中高層の建物などで主流となりつつあります。
    足場の組立・使用時の安全性が高く、足場内の空間が広いため、作業性が良いなどの特徴があります。

    単価は1平方メートル1,200円~1,800円が相場です。

    3.足場費用の計算方法

     
    足場費用は以下の式から算出されます。

    足場費用=足場架面積×足場平米単価

    足場架面積とは、足場の外側の面積のことで、以下の式で計算します。

    足場架面積=(建物の外周+8メートル)×高さ

    例えば、建物の外周が100メートル、高さ15メートル、足場平米単価1,100円だとすると、
    足場費用は以下の式により、178万2,000円になります。

     足場架面積=(100+8)×15=1,620平方メートル
     足場費用=1,620×1,100=178万2,000円


    4.足場の組立費用が高くなる場合

     
    建物が高層になるほど、足場の単価が高くなる傾向にあります。
    また、高層建物の場合、倒壊防止対策などをきちんと行う必要があるため、
    組立費用が高額になりやすいのです。

    さらに、足場を組み立てる場所が狭く、作業性が悪い場合、
    基本単価より高い費用を請求される可能性があります。


    5.足場の組立費用を安くする方法

     
    ここまで足場組立費用についての相場を見てきました。
    直接工事費に加えて足場費用も考慮し高額になることも多いので、
    現場責任者の方ならできるだけ費用を抑えたいと思うことでしょう。
    ここでは足場組立費用を抑えるためのポイントを3点解説していくので、ぜひチェックしてみてください。


    5-1.複数の業者に見積もりを依頼する


    足場の施工業者や材料のリース業者など3〜5社の業者に見積もりを依頼しましょう。
    できるだけ低価格の業者を選ぶことで、費用を抑えられます。

    5-2.工種毎で必要な足場をできるだけまとめて組む


    外壁工事においても、建物によって複数の異なる作業があるため、
    それぞれの作業にあった足場を一度に組むことをおすすめします。
    特定の工種施工後に追加で行う組立や解体後に再度行う組立などの二度手間費用を抑えられます。


    5-3.外壁の仕上げ工事の搬入や取付計画を考慮した足場を計画する


    外壁工事の材料によって、搬入や取付方法を考慮していないと、
    足場を解体しなければならなくなる場合があります。

    具体的な対策は、材料のサイズと搬入方法を考慮して足場に荷取りステージを設ける方法が挙げられます。
    外壁と足場の間に材料を通す場合には、外壁と足場の距離を適切に離すことが大切です。

    このように、二度手間とならない計画を事前に立てることで、足場組立に掛かる費用を抑えられます。
     

    6.まとめ




    今回は、足場の組立費用の相場価格と単価について、さらに組立費用を抑える方法まで解説してきました。
    足場の費用を抑えるには、足場組立の計画を十分に検討することが重要です。

    本記事を参考に適切な足場組立費用の相場や、不要な出費の抑え方を知ることで、
    経費の削減を実現していきましょう。
  • 足場の種類を5つ紹介!サイズ規格の見分け方も
    建築現場で使用されている足場にはさまざまな種類があります。
    足場は、作業者が高い場所で安全に作業を行えるように設置します。

    一方で、足場は工事後に解体するため、解体が容易でなければなりません。
    つまり足場は、使用中にしっかりと作業者を支えるだけでなく、組み立てやすく解体しやすいものである必要があります。

    今回は、足場の種類とサイズ規格について解説します。


    ▼ 目次
     1.足場の種類について
         1-1.  くさび式足場
         1-2.  枠組足場
         1-3.  単管足場
         1-4.  吊り足場
           1-5.  移動式足場
       2.  足場の規格について
         2-1.  足場のサイズ規格とは
           2-2.  足場のサイズ規格が2種類ある理由と見分け方
       3.  まとめ


    1.足場の種類について

     
    まずは、主な足場の種類について説明します。
     

    1-1.くさび式足場




    くさび式足場は、「くさび」と呼ばれる金具をハンマーで打ち込んで部材に
    接続することによって組み立てられる足場です。

    1980年に株式会社ダイサンが開発・販売したくさび式足場が広く普及したため、
    商品名の「ビケ足場」という通称で呼ばれることもあります。

    くさび式足場は、鋼管(鉄パイプ)を建地(支柱)として一定間隔で立て、そこに水平材や斜材を固定して組み上げます。
    これまでは主に低層建築のために使用されていましたが、近年では中層建築や一部の高層建築にも採用されています。

    この足場の利点は、組み立てや解体がハンマーを使って容易に行える点や、複雑な形状の建物にも対応できる点です。
    また、コストパフォーマンスも高い一方、場所によっては設置が難しい場合があります。


    1-2.枠組足場





    一般的に多くの現場で利用されているのが、枠組足場です。
    主に、鋼管を溶接して構築した建枠をベースに、脚注ジョイント・ジャッキ型ベース金具・
    床付き布枠・筋交い・鋼製布板などの部材を組み合わせて立てます。

    枠組足場は主に建物の外壁に沿って設置され、軽量でありながら高い強度を備え、
    組み立てや解体も比較的簡便なのが利点です。

    また、組み立てにハンマーを使用しないため、騒音もそれほど大きくありません。
    初期にはアメリカのビティスキャホード社から輸入されていたため、「ビティ足場」と呼ばれることもあります。


    1-3.単管足場




    単管足場は、直径48.6mmの鋼管を使用して組み立てる足場です。
    現在のように鋼管が主流となる前は、丸太が使用されていました。
    この足場では、単管にクランプと呼ばれる金具を接続し、さらにボルトで締め付けて組み立てを行います。

    欠点は、くさび式足場や枠組足場と比べると、組み立てや解体にやや時間がかかることです。
    その反面、足場の形状の自由度が高く、他の足場が使用できない狭小地でも組み立てが可能です。

    組み立て自体は比較的簡単であり、部材はホームセンターでも入手可能なため、DIYで使用する人も多いです。

    1-4.吊り足場




    吊り足場は、支持方法が他の足場とは異なり、上から吊り下げて組み立てるタイプの足場です。
    構築物の鉄骨の梁などから支持を取って、吊り下げた作業床を支えます。

    橋梁やプラントなど、足場を下から組み上げるのが困難な場所に設置できるのが特徴です。
    ただし、吊り足場は他の足場に比べて設置の難しい足場であるため、高さにかかわらず「足場の組立て等作業主任者」の選任が必要です。

    また、吊り足場は「吊り枠足場」と「吊り棚足場」に大別され、状況に合わせて使い分けられています。


    1-5.移動式足場




    移動式足場は、キャスター(車輪)が取り付けられた可動式の足場です。
    一度組み上げてしまえば容易に移動させられるため、効率的な施工が可能です。

    作業床は平らで広く、安全な作業が行えます。
    さらに、高さの調整も可能であり、天井や壁などの内装の仕上げ工事に適しています。

    ただし、勝手に動いてしまわないよう、作業中はブレーキをかけておかなければなりません。
    多くの移動式足場は、転倒を防止するために「アウトリガー」と呼ばれる補助用の支柱を立てて固定します。

    中央ビルト工業の1600幅ローリングタワーは、作業床の高さが5400ミリメートルまでであれば、
    キャスターを固定すればアウトリガーによる固定は必要ありません。
    移動後、すぐに作業が行えるため、作業性に優れています。

    移動式足場を使用する際は、作業者が乗った状態での移動は避け、
    足場の上では脚立やはしごを使用しないようにするなど、
    さまざまな注意点を守る必要があります。

    2.足場の規格について

     
    各建築現場の状況に対応するさまざまな種類の足場がありますが、
    それぞれの足場には規格が定められています。

    異なる種類の足場はもちろん、同じ種類の足場であっても、
    規格が異なる部材を混在させて使用することはできません。
    ここでは、足場の規格について説明します。

    2-1.足場のサイズ規格とは

    足場には、インチ規格とメーター規格という2種類の規格があります。

    インチ規格とは、主にアメリカやイギリスなどの海外で使用されている規格です。
    1インチは25.4ミリメートルで、建地のピッチは最も長いもので1829ミリメートル、短いもので610ミリメートルとなります。

    一方のメーター規格は、国際単位系(SI単位系)を採用したもので、日本をはじめとする多くの国で使用されています。
    メートル単位で設計された足場は数字のキリがよく、現場での利用が容易なため、
    国内の現場で足場を使用する際は、メーター規格が適切です。


    2-2.足場のサイズ規格が2種類ある理由と見分け方




    足場にはメーター規格とインチ規格があることを説明しました。

    足場のサイズ規格が2種類ある理由は、中高層ビルやマンション、
    戸建て住宅などの幅広い場面で使用される枠組足場が、当初アメリカから輸入されていたためです。

    アメリカは長さの単位がインチであるため、輸入された足場もインチ規格のものでした。
    国内で使用されているメートル単位とは異なりますが、枠組足場が軽量かつ高い強度で組み立てやすかったことから、
    多くの現場で使用されました。

    その後、メーター規格の枠組足場が販売されるようになり、サイズ規格が異なる2種類が市場に流通するようになりました。
    同じ枠組足場ではありますが、サイズ規格が異なるものを混在させて使うことはできません。

    インチ規格とメーター規格は、実際に長さを計測することで区別できます。
    見た目だけでは区別が難しいため、足場部材が混在しないように管理する必要があります。

    日本の建物はメーター規格で建てられているため、インチ規格の足場は不要ではないかと思う方もいるかもしれませんが、
    実は国内にもインチ規格の建物があります。それは主に輸入住宅です。

    輸入住宅産業協会では、「海外の設計思想に基づき、資材別またはパッケージで輸入し、
    国内で建築される住宅」を輸入住宅と定義しており、日本の建築物にはない特徴が見られます。

    代表的なものとしては、2×4(ツーバイフォー)や2×6(ツーバイシックス)と呼ばれ、
    面と面を合わせて建てる「パネル工法」が挙げられます。

    日本の建築物は柱や梁で構成する「従来工法」で建てられているのに対し、
    輸入住宅は「パネル工法」が一般的となっています。

    「在来工法」に対する「パネル工法」のメリットとしては、間取りの自由度が高く耐震性が高いという点があります。
    さらに気密断熱性が高く、省エネ性能に優れています。

    これらのメリットから、輸入住宅を選ぶ人もいるのです。
    そのため、輸入住宅を建てる際にインチ規格の足場が使われることがあります。
     

    3.まとめ




    今回は、足場の種類とサイズ規格について解説しました。
    足場の選択は、どのような工事をするのかによって大きく変わります。
    足場メーカーの技術情報を確認して、工事内容に適した足場の種類とサイズ規格を選びましょう。
  • 屋根工事に使用する足場とは?特徴や設置する際の注意点など
    建築工事の際に必要な足場ですが、屋根の工事の場合、どのような種類や注意点があるのでしょうか。
    法律では、作業が2メートル以上の高さで行われる場合には、足場の設置を義務付けています。

    屋根工事においても、安全性と近隣住民への配慮を最優先に考え、
    適切な足場を設置することが重要です。
    それでは、屋根工事ではどのような足場を設置すればよいのでしょうか。

    今回は、屋根工事に使用する足場について解説します。

    ▼ 目次
     1.屋根工事に使用する足場の特徴
       2.  屋根足場の種類
       3.  屋根足場を設置する際の注意点
         3-1.  職人の安全確保
           3-2.  墜落防止対策を行う
         3-3.  近隣住民への配慮
       4.  屋根足場なら『マルチトラスB』
       5.  まとめ


    1.屋根工事に使用する足場の特徴

     
    屋根工事に使用する足場の特徴は、建物の外周に設置するような足場とは異なり、
    垂直ではないということです。

    多くの建物の屋根には雨を流すための勾配が付いているため、
    屋根の上で作業をするための足場も屋根の形状に合わせて組み立てる必要があります。

    一般的な戸建ての屋根工事で使用する屋根足場は、外壁工事用の足場とは異なり、
    作業者が乗る足場板は設置せず、単管パイプだけで組み立てられます。
    作業者は、屋根の上で単管パイプに体重を預けることによってバランスをとります。

    屋根工事で足場を設置する際に重要なのは、屋根勾配です。
    屋根勾配とは屋根の傾斜の角度のことで、水平方向に対する角度を示すものです。
    一般的に角度の単位は「度」で示しますが、日本の建築業界では屋根勾配を「寸」という単位で表します。

    古来、日本では長さや重さの単位として「尺貫法」が使用されていました。
    この「尺貫法」では、長さは「尺」、重さは「貫」が基本単位でした。

    「尺貫法」において「寸」は「尺」の10分の1の長さを表し、メートル法では約3.03センチメートルとなります。
    この単位は角度を示す際にも使用されていましたが、
    1891年(明治24年)に「度量衡法」が制定され、1951年(昭和26年)に「計量法」が制定されました。

    「計量法」の制定により、国内の製品についても、国際基準に基づいて長さや重さを正確に計測することができるようになりました。

    現在は、国際単位系(SI単位)に統一され、図面などではメートルを基準とする単位が使用されています。
    しかし建設現場では、江戸時代の名残である「尺貫法」が使用され続けています。
    そのため、建設現場では屋根勾配を「3寸」や「4寸」といった形で示すのです。

    ここでの「3寸」は、水平長さ10寸(約30センチメートル)に対して、
    垂直高さが3寸(約9センチメートル)の勾配を意味します。

    屋根勾配は建築物の用途・外観・屋根材の種類などによって決まり、
    「6寸」以上が急勾配、「3寸」~「5寸」が並勾配、「3寸」以下が緩勾配と区別されています。

    一般的には、足場が必要とされる屋根勾配は「6寸」以上とされていますが、
    屋根の形状や作業内容に応じて、足場設置の必要性を判断しましょう。

    2.屋根足場の種類

     
    一般的な屋根足場は、外壁工事で使用する足場と同じ材料を使用することができます。
    代表的な足場は、単管足場です。

    単管足場であれば、屋根の中心に棟があり四方に流れる形状の寄棟(よせむね)屋根や、
    屋根の1か所が頂点になっている方形(ほうぎょう)屋根のような、
    上と下で寸法が変わる屋根にも柔軟に足場を組むことができます。

    2枚の板を左右対称に合わせたいわゆる三角屋根である切妻(きりつま)屋根や、
    1枚が片方にだけ流れる片流れ屋根のような屋根には、くさび式足場で一定のピッチで組むこともできます。

    3.屋根足場を設置する際の注意点


    ここでは、屋根足場を設置する際の注意点について説明します。


    3-1.職人の安全確保

    一般的に屋根足場が必要とされる屋根勾配は「6寸」以上とされていますが、
    これは角度にすると約30度になります。
    一般的な道路の場合、傾斜が約3度あれば傾きを感じるでしょう。

    実際に30度の傾斜を体験すると、かなり傾いていることがわかります。
    単に「6寸」未満であることを理由に屋根足場は不要であると判断するのではなく、
    屋根の材質や状態も確認して足場の必要性を検討することが重要です。

    屋根の傾斜が「6寸」未満の場合、足場を設置する際は、
    顧客に対して設置の理由を明確に説明する必要があります。
    足場を設置すると、その分費用が増える可能性があるためです。

    足場の設置に伴う追加費用は顧客が負担することになりますので、
    足場の単価を明確に提示し、増加分の費用を計算できるようにしましょう。

    3-2.墜落防止対策を行う



    単に屋根足場を設置しただけでは、職人の安全は完全には確保されません。
    傾斜が緩やかで足場を設置しない場合であっても、墜落防止対策を行いましょう。

    平成26年1月に作成された
    「墜落防止のための安全設備設置の作業標準マニュアル」 
    https://www.mhlw.go.jp/content/000550445.pdf

    では、平成25年の建設業における墜落による死亡災害の特徴として、
    「屋根、屋上」からの墜落が17%となっており、
    「足場」からの墜落が次に多いという結果が示されています。

    こうした事故を防ぐために、屋根足場を設置するかどうかにかかわらず、墜落防止対策を行いましょう。
    具体的な墜落防止対策としては、屋根の上での作業を始める前に、
    墜落防止対策の要である最初の垂直親綱を設置することが挙げられます。

    垂直親綱に安全ブロックを連結し、墜落制止用器具のフックを取り付けることで、
    作業開始前から作業終了まで、作業者の墜落を防ぐことが期待できます。

    3-3.近隣住民への配慮

    屋根の上での作業を行う際は、ほこりやゴミが飛散する可能性があります。
    これらが近隣住民の敷地に落ちたり、建物に引っかかったりすることを防ぐために、
    養生シートを設置しましょう。

    工事期間中は、屋根の上という高い場所に作業者がいるため、視線が気になる近隣の方もいるでしょう。
    養生シートを設置することで、近隣の方は視線を感じずに済み、作業者も作業に専念することができます。

    また、設置や解体の作業を行う際は騒音が発生するため、防音シートを設置し、
    極力音が漏れないようにする配慮が必要です。
     

    4.屋根足場なら『マルチトラスB』



    ここまで、一般的な戸建て住宅の屋根を想定して、屋根足場について説明しました。
    ここからは、特殊な建物の屋根足場について説明します。
    特殊な建物の一例として、神社仏閣について考えてみましょう。

    神社仏閣には日本古来の建築様式が採用されており、その多くが本瓦葺きと呼ばれる工法によるもので、
    形は反り屋根が一般的となっています。

    神社仏閣に反り屋根が多い理由は、形の美しさだけでなく、木造の建物を雨から守り建物内に自然光を取り込むためです。
    建物の主体である「身舎」部分の屋根の勾配はきつくし、軒の勾配は緩くすることでこれを実現します。

    神社仏閣の屋根足場を組む際は、この屋根の反りがあるため、一般の戸建て住宅と同様の足場を組むことが困難です。
    このような場合、中央ビルト工業の『マルチトラスB』が有用です。

    『マルチトラスB』は、設計条件によっては25メートル飛ばすことができるジョイント式大空間用作業足場で、
    大スパンとなる素屋根や作業ステージ、渡り通路など、さまざまな用途に使用できます。

    素屋根とは、工事期間中に柱や壁などを雨で濡らさないようにする、雨養生のための仮設物です。
    素屋根を設置すれば、雨が降っていても工事を続けることができるため、
    工事期間が長い神社仏閣建築にとって、不可欠な仮設建物です。

    『マルチトラスB』は、ピンを差し込んでユニットとして使用することができます。
    また、部品点数が少なく、簡単に施工できるため、工期の短縮を期待できます。


    5.まとめ




    今回は屋根足場について解説しました。
    一般的な基準では、屋根足場を設置する目安は勾配「6寸」以上とされていますが、
    傾斜が緩やかな屋根であっても、屋根や屋上からの墜落災害が発生する可能性があるため、
    墜落防止対策は必ず行いましょう。
  • 建築現場の足場の種類とは?外部足場、内部足場、地足場の特徴をそれぞれ解説
    建築工事で必ず必要な足場は、工事に関わる職人にとって、なくてはならないといっても過言ではありません。

    足場は工事の初期段階から最後までさまざまな場所で使用されます。
    また、足場は1度組んだら終わりではなく、工事の進捗によって形を変えて利用されます。

    足場は職人の安全を確保するだけではなく、作業に専念して良い仕事をしてもらうためにも必要です。
    そのため、職人が作業しやすい足場を組むことが求められます。

    そこで今回は、作業ごとに組まれる足場の分類について解説します。

    ▼ 目次
     1.足場を大まかに分類すると
         1-1.  外部足場
         1-2.  内部足場
         1-3.  地足場
       2.  それぞれの特徴・組み立て方とは
         2-1.  外部足場の場合
           2-2.  内部足場の場合
         2-3.  地足場の場合
       3.  まとめ


    1.足場を大まかに分類すると

     
    足場の分類と聞くと、枠組み足場やくさび緊結式足場などを想像するかもしれませんが、
    ここでは、作業の場所ごとに利用される足場の分類について説明します。
     

    1-1.外部足場




    外部足場は建物の外側に組み立てる足場です。建物全体を取り囲むように組まれ、
    高さも建物と同じくらいになります。

    外部足場に求められることは、十分な強度があり、作業者が複数人移動しても安定していることです。
    外部足場は足場の中でも最も長い期間利用するため、天候の影響を受けないように配慮しなければなりません。

    具体的には台風などの強風時にもしっかりと耐える足場です。
    足場で使用される単管パイプは、外径48.6ミリメートルの棒状であるため、
    単管パイプ単体であれば余程の強風でなければ風の影響を受けることはないでしょう。

    しかし外部足場には通常、飛散防止ネットが設置されます。飛散防止ネットは風の力を受けやすく、
    その分足場にも大きな負荷がかかります。

    外部足場は足場の中でも高所まで組むため、
    飛散防止ネットにかかる力をしっかりと支えられるような施工と管理が必要です。


    1-2.内部足場





    工事が進み建物の床が完成すると、内装工事のための内部足場を設置します。
    内装工事には建物内部の床・壁・天井の仕上げをはじめ、電気・水道・ガス等の設備工事も含まれます。

    内装工事では上の階の床裏作業に見合う高さの足場が必要です。
    建築基準法では居室の天井高を2100ミリメートル以上と規定しており、高くする分には制限がありません。

    一戸建てやマンションでは2400ミリメートルの天井高が一般的です。
    天井高が2400ミリメートル程度の内装工事では、足場を組まずに脚立や立ち馬と呼ばれる可搬式作業台が使用されています。

    一方、工場や商業施設、体育館や劇場など用途が特定されている建物については、
    多くの場合5メートルを超えるため、外部足場のような足場を組むことがあります。

    脚立や立ち馬では届かない場所で、足場を移動しながら作業をする場合は、
    高所作業車やローリングタワーを利用する方法があります。



    1-3.地足場





    地足場は地面より下の、建物の基礎部分などの構造物をつくるために設置する足場です。

    建築工事において、基礎工事は建物の土台となる部分をつくる重要な作業であり、
    丈夫な鉄筋コンクリートで施工します。

    鉄筋コンクリートの施工で建物の強度などを確保するために初めに行う「配筋作業」では、
    作業員が基礎内部で安全に動き回ることができるよう、地足場を一時的に設置します。
    特に建物の土台となる基礎梁の組み立ての際に、作業員が基礎の内部で鉄筋を結束しながら移動するためにも地足場が不可欠です。

    次に行なわれる作業は「コンクリートの打設」。建物の基礎が均一な強度となるように、
    コンクリートを全体に均等に流し込むことがカギとなります。
    そのため作業員は地足場を移動しながら、打設する位置を調整しコンクリートを流し込みます。

    これらのプロセスで地足場が重要な役割を果たし、安全で効率的な環境と、建物の強度や安定性が確保されます。

    2.それぞれの特徴・組み立て方とは

     
    作業によって使い分けられている足場ですが、それぞれの足場の特徴と組み立て方について説明します。

    2-1.外部足場の場合

    外部足場の特徴は建物全体を覆うため、たくさんの足場資材を使用することです。
    資材が多いため組み立てる時には、多くの鳶職人が作業を行います。

    外部足場は建物の最上部まで足場を組み、作業には墜落リスクが伴います。
    そのため5メートル以上の高所で作業を行う場合は、フルハーネス型墜落制止用器具を使用しなければなりません。

    外部足場の組み立て方は、まず建物の図面をもとに足場の割りを行います。
    足場の割りは設計図となるもので、この段階で全体の構造が決まります。
    足場の割りが決まったら、設計図通りに足場を組みます。


    2-2.内部足場の場合

    内部足場の特徴は、建物の内部構造によってさまざまな選択肢があることです。
    住宅やマンションなどの天井高が2400ミリメートル程度であれば、
    脚立や立ち馬を使用すれば作業はできるため、足場を組み立てる必要はないでしょう。

    内部足場を使用する判断基準としては、足場以外の方法で作業床を設けられるかということがポイントになります。
    内部足場を組み立てる場合、外部足場と違い建物の内部に多くの資材を運搬しなければならないため、非常に手間がかかります。

    また建物の内部に外部足場のような足場を組むと、作業者の移動や資材の運搬に影響します。
    内部足場を検討する場合、できるだけ手間のかからない方法を優先に考えます。

    内部足場の手段として最初に検討するのが高所作業車です。
    高所作業車は、高いもので25メートルまで伸ばすことができ、移動が容易であることから、
    多くの工事現場で利用されています。

    しかし高所作業車は通路を確保しなければ利用できません。建物内部で通路が狭い、段差がある場合、
    高所作業車が入っていけません。その際は、ローリングタワーの利用を検討しましょう。

    ローリングタワーであれば、6メートル程度までの作業床を簡単に組み立てることができます。
    また、高所作業車が入れない場所でも、資材をバラして運搬できるため、最小限の資材運搬で足場を設置することができます。

    高所作業車やローリングタワーは床面が水平な場所でなければ使用できないため、
    傾いた床面の場合は単管足場などを組む必要があります。

    2-3.地足場の場合

    地足場は地面よりも下で行う作業のために組む足場です。
    ビルやマンションなどの大規模な建築物は、大きく強固な基礎が必要となるため、地面を掘って基礎を施工します。

    地足場は基礎工事を行う職人が、基礎の上を移動したり配筋作業をしたりするために組み立てます。
    建物の中心を貫くように設置して、基礎の上を移動できる足場です。

    地足場の組み方は、基礎として地面を掘った場所に捨てコンと呼ばれるコンクリートを流し込みます。
    捨てコンは基礎をつくる前に地盤に流し込むコンクリートのことで、地足場は捨てコンの上に組み立てることになります。

    地足場は単管で組まれることが多く、その理由は高さや設置場所の調整に自由度があるからです。
    地足場は基礎工事の進捗によって何度か組み直すこともあります。

    地足場を組む上で注意することは、最後に基礎のコンクリートを流し込む時に干渉しないことです。
    足場がコンクリートで固められてしまい解体できなくなってしまいます。

    コンクリートを流し込む前に、地足場の建地の位置を確認しましょう。
     

    3.まとめ




    今回は、建築工事の作業ごとに組まれる足場の分類について解説しました。
    どの足場も作業者の安全と作業のしやすさのために組まれるものです。
    資材も共用することが可能であるため、使い方を工夫して作業の効率化に取り組んでみては如何でしょうか。
  • 【足場材】単管クランプとは?種類と特徴について解説
    足場の種類が枠組足場の場合、決まった資材を準備すれば、工具などを使用せずに組み立てることができます。

    くさび緊結式足場であれば、梁となるパイプの両端にある「くさび」と呼ばれる突出部を建地の「コマ」にはめ込み、
    ハンマーで打ち込み緊結して組み立てます。

    どちらの足場も、組み立て・解体を容易に行えるため、多くの工事現場で利用されています。

    しかし枠組足場やくさび緊結式足場は、規格で寸法等が決められており、
    複雑な形状の土地や狭小地での使用には適していません。

    自由度の高い足場を組む場合は、単管足場を使用します。
    単管足場は、ラチェットレンチやインパクトレンチを使用し、
    単管パイプと単管クランプを組み合わせることで自由度の高い足場を組むことができます。

    そこで今回は、自由度の高い足場を組むために必要な単管クランプについて解説します。

    ▼ 目次
     1.単管クランプとは
       2.  一般的な単管クランプの特徴
       3.  単管クランプの種類
         3-1.  直交型クランプ
           3-2.  自在型クランプ
         3-3.  3連クランプ
         3-4.  垂木止めクランプ
         3-5.  板止めクランプ
       4.  単管クランプを使う時の注意点
         4-1.  逆さクランプに注意!
         4-2.  締め付けはラチェットレンチ、インパクトレンチを使用
         4-3.  単管クランプカバーで作業者を保護
       5.  まとめ


    1.単管クランプとは

     
    単管クランプとは、足場の骨格となる単管パイプを緊結するための金具です。

    単管クランプには、ボルトとナットが付いており、
    ラチェットレンチやインパクトレンチなどを使ってナットを締め付けることで単管パイプと緊結します。
    単管クランプには、用途に合わせてさまざまな種類があります。

    2.一般的な単管クランプの特徴

     
    単管クランプは、単管パイプ同士をしっかりと固定できる構造になっています。

    また単管クランプ自体の強度が弱くては足場を支えることができないため、強度の強い鉄製が一般的です。

    ただし、そのまま屋外で使用すると雨などによって腐食してしまうため、腐食予防としてクロメートメッキが施されています。

    クロメートメッキは装飾用のメッキではありませんが、薄い金色に近く、新品の製品には光沢があります。

    緊結する単管パイプを簡単に把持できるよう、単管クランプにはボルトとナットが付いています。
    単管パイプに取り付ける際は、ナットを緩めてボルト部を開き、そこに単管パイプを挟み込むことができます。

    その後、インパクトレンチなどを使ってナットを締め付けて単管パイプを固定します。

    3.単管クランプの種類


    単管クランプは用途によってさまざまな種類があります。
    ここでは、単管クランプの種類について説明します。


    3-1.直交型クランプ

    直交型クランプは、単管パイプを直角に緊結するために使用します。
    足場工事で最も使用されている単管クランプで、単管パイプを直角に組むことができ、強い強度を得られます。

    足場1スパンの積載荷重が400キログラムに規制されているところ、
    単管クランプの許容荷重は500キログラムのため、十分耐えることができます。

    3-2.自在型クランプ



    自在型クランプは、単管パイプの角度を自由に調整できるものを指します。
    自在型クランプは直交型クランプとは異なり、2つのクランプがつながっているだけで角度は固定はされていません。

    そのため角度を自由に調整できることがメリットですが、
    自在型クランプ単体の許容荷重は350キログラムと、直交型クランプと比べて低くなります。

    自在型クランプを使用する場合は、足場の許容荷重に影響がないか、注意が必要です。

    3-3.3連クランプ

    3連クランプには、単管パイプを把持するクランプが3つ連結されています。
    直交クランプのように直角に固定できるタイプと、自在クランプのように角度を調整できるタイプがあります。

    1本の建地に対して足場用の単管パイプを2本設置する場合などには、
    3連クランプを使用することで、足場用のパイプを平行に組むことができます。

    3-4.垂木止めクランプ

    垂木止めクランプは、単管パイプと木材を固定するためのものです。
    単管足場では、自由度の高い足場を組むために、部材の一部に木材を使用することがあります。

    木材は、工事現場での加工が容易で、垂木止めクランプに直接ネジで固定することができます。
    垂木止めクランプの種類にも、直交タイプや平行タイプ、自在タイプなどがあります。

    3-5.板止めクランプ


    板止めクランプは、単管クランプに木の板を固定するために使用します。
    留め金部分がコの字になっているため、一般的なコンパネなどの厚さ12ミリメートルの板材を挟み込めるようになっています。



    4.単管クランプを使う時の注意点


    自由度の高い足場を組むことができる単管クランプですが、
    使用時にはいくつかの注意点があります。
    ここでは、具体的な注意点について説明します。


    4-1.逆さクランプに注意!

    単管クランプはその構造から、どのような方向にも取り付けることができます。
    建地の単管パイプに取り付ける場合、締め付けるボルトがどの向きにあっても、クランプの強度に影響はありません。

    しかし、横さんの単管パイプを取り付ける場合は、ボルトの向きに注意しなければなりません。
    締め付けるボルトが横さんの単管パイプの下側になってしまうと、横さんにかかっている力が加わることになります。

    単管クランプのボルトは単管パイプを締め付けるためのものなので、横さんからの力が加わると、ボルトに余計な負荷がかかります。

    ボルトに負荷がかかり続けると、ナットが緩んでくる可能性があります。
    その結果単管クランプが開いてしまった場合に、ボルトが下側にあると、
    それまで把持していた単管パイプが落下するかもしれません。

    ボルトを下側に取り付けることを逆さクランプといい、単管クランプを設置する場合は、
    この逆さクランプに注意しなければなりません。 

    4-2.締め付けはラチェットレンチ、インパクトレンチを使用




    単管クランプを取り付ける際は、適切な工具を用意する必要があります。

    単管クランプを締め付ける工具としてよく利用されているのが、ラチェットレンチです。
    ラチェットレンチは、工具にラチェットと呼ばれる機構が組み込まれており、
    回転方向を一方向に制限することができます。回転方向を一方向にすることで、連続的に締め付け作業ができます。

    回転方向の切り替えはレバーで行えるため、ナットを緩める時にも同じように使用することができます。

    単管クランプの設置・解体作業をする場合は、17×21サイズのラチェットレンチを準備するとよいでしょう。

    ラチェットレンチよりも効率的に作業ができる工具として、インパクトレンチがあります。
    インパクトレンチは、モーターを使用した電動工具で、ラチェットレンチよりも短時間で楽に、
    ナットの締め付けや取り外しを行うことができます。

    インパクトレンチは内部にハンマーと呼ばれる打撃機構が組み込まれているのが特徴で、
    これにより締める・緩めるといった作業がスムーズになります。

    現在主流となっているバッテリー方式のインパクトレンチを使用する場合は、
    作業開始前にしっかり充電しておきましょう。

    4-3.単管クランプカバーで作業者を保護

    単管クランプを組んだあとは、カバーを取り付けましょう。
    組んだだけの状態では、単管クランプの部分が単管パイプから突き出たままです。

    足場は多くの作業者が使用するため、突き出た部位があると、そこに引っかかったりぶつかったりすることがあります。

    重い工具や荷物を運ぶことの多い作業者が単管クランプにぶつかると、当たり所が悪ければ、ケガをしてしまう可能性があります。
    法的な設置義務はありませんが、作業者を守るためにも、単管クランプカバーを取り付けましょう。

    5.まとめ




    今回は単管クランプについて解説しました。
    単管クランプの種類と特徴を理解することで、自由度のある足場が組めるようになります。

    また、単管クランプを使用して足場を組む際は、
    逆さクランプやケガに注意して、安全に取り組みましょう。
  • 物流の2024年問題が建設業界に与える影響と今後の対策
    EC(Electronic Commerce)の発展は、ビジネスや私たちの生活に大きな影響を与えています。
    ECは「電子商取引」のことであり、一般の消費者に商品を販売するだけでなく、
    消費者同士や企業同士の取引など、あらゆる取引に利用されています。

    EC業界を支えているのは、WEBサイトを運営するIT業界と商品を発注者まで配送する物流業界です。
    IT業界では、AI技術や人工知能を活用し、日々革新を遂げています。

    一方、物流業界では大きな課題を抱えており、その影響はEC業界だけでなく、製造業や建設業にも及んでいます。

    そこで今回は、物流業界の課題が建設業界に与える影響について解説します。
     


    ▼ 目次
     1.物流業界の2024年問題とは何か
       2.  物流の2024年問題が建設業界に及ぼす影響は?
        3.  建設業界が取り組むべき対策
           3-1.  DX化による業務効率化
         3-2.  労働時間や条件の見直し
           3-3.  顧客との価格交渉
       4まとめ

    1.物流業界の2024年問題とは何か

     

    物流業界の2024年問題とは、2024年4月以降にドライバーの時間外労働時間が規制されることによって
    生じる問題の総称のことです。

    物流業界は、ドライバーの慢性的な長時間労働によって人手不足を補っていましたが、
    2024年4月以降ドライバーの時間外労働時間は年間960時間に制限されるため、
    業務量に対して深刻な人手不足になることが予想されています。

    そもそも、働き方改革関連法に伴い労働基準法が改正されることの狙いは、
    少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や育児や介護との両立など、働く人々が多様な働き方を選択できる社会の実現です。

    改正労働基準法で定められた時間外労働時間の上限は、原則月45時間、年360時間。
    大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から施行されていました。
    物流や建設・医療関係については猶予が設けられていましたが、2024年4月以降適用されます。

    またドライバーにとって絶対に避けたい交通事故ですが、現実はドライバーの長時間労働が原因による事故だけでなく、
    長距離の連続運転による事故も発生しています。

    物流業界には430(ヨンサンマル)休憩というルールがあり、4時間を超えて連続運転をする場合には、
    30分以上の休憩等を確保しなければなりません。

    改正前はこちらの休憩時間も単純に「運転をしなければよい」とされていました。
    しかし改正後は「必ず休憩にあてなければならない」とされるため、ドライバーは運転時間にも注意する必要があります。

    2.物流の2024年問題が建設業界に及ぼす影響は?


    では物流業界の2024年問題によって、建設業界にはどのような影響があるのでしょうか。

    まず考えられるのが、建設工事に関わる資材が、予定通りに届かなくなる可能性があることです。
    建設工事に使われる資材は、大きな物が多く数もたくさん必要です。
    運搬に使用する車両も大型の特殊車両が必要となることもあり、対応できる運転手も限られます。

    物流業界の人手不足により、工事の日程通りに資材が届かないと、顧客と契約した期限までに建物が完成できなくなる可能性があります。

    次に考えられる影響は、運送費用の高騰です。工事の日程通りに資材が届かないとなると、
    余分に費用をかけて別途運搬方法を確保しなければなりません。

    建設業界では資材の価格高騰によって、建設コストが上昇している状況です。
    物流業界の2024年問題によって、建設業界にも資材到着の遅延や運送費高騰などの問題が発生する可能性があります。


    3.建設業界が取り組むべき対策

     
    ここでは建設業界が取り組むべき対策について説明します。

    3-1.DX化による業務効率化


    政府が実施を支援する働き方改革の取り組みには、DX化の推進があります。
    生産性の向上や生活と仕事の両立を支援するために、ハードウェアやソフトウェアの環境整備を進め、
    最新のIT技術を活用する必要があります。

    しかし、これまでアナログ的な業務が多いとされていた建設業では、何から取り組めば良いかわからないことも多いことでしょう。
    業務のDX化を推進するためには、ITリテラシーが高い人材が不可欠です。

    社内でデジタル人材を育成し各部署に配属することで、職場の業務を一から見直すことはもちろん、
    デジタル化に抵抗感を持つ人たちも、業務の効率化を実感することに繋がります。

    身近な取り組みとしては、書類の保管や管理業務のデジタル化が挙げられます。
    さらにクラウドサービスなどを活用して、会社全体の情報を連携することでも効率化を図ることができます。




    一般的にDX化による業務の効率化は、主に事務作業に関する事例が多く紹介されていますが、
    現場の作業においてもロボットを利用し、足場の組立や解体を行う取り組みが行われています。

    足場の組立や解体作業では、多くの資材運搬を行わなければなりません。
    これまで工事現場での運搬作業は作業者が行っていましたが、肉体的負担が大きい運搬作業をロボットが行うことで、
    少ない作業者によって工事を行うことができます。現在はまだ試験段階ですが、近い将来実用化することが期待されています。


    3-2.労働時間や条件の見直し

    DX化による業務効率化を行ったとしても、根本的な人手不足が解消されるとは限りません。
    根本的な人手不足を解消するためには、足場業界で働く人を増やす必要があります。

    人手不足の原因は、若年層の在職率が著しく減少していることや、リーマンショック以降に建設業の需要が一時的に激減したため、
    仕事の無くなった職人たちの多くが他の職種に転職したことも挙げられます。

    足場業界や建設業界では、若年層の就業者を増やすために、工業高校などと連携して技能体験研修を行い、
    建設業に関する理解を深める活動を実施しています。また人材の流出を防ぐために、
    労働条件や賃金条件の見直しを行って待遇改善に取り組む必要もあります。

    さらに社会保険の加入や福利厚生の拡充といったことについても改善し、人手不足解消のためにあらゆる対策を実施することも欠かせません。
    経営者にとっては財務的な負担となりますが、賃金上昇や待遇改善については、働き方改革の一環として国や関係団体から要請されています。

    3-3.顧客との価格交渉

    DX化による業務改善や、待遇改善を行うためには資金が必要となるため、
    経営者は発注者に対しての価格交渉が求められます。
    2024年4月以降、単に受注を増やすだけでは労働時間の上限規制があるため、売り上げを確保することが難しくなるでしょう。

    発注者もこれまでと同じコストでは、同様のサービスを提供してもらえなくなる可能性があります。
    政府も2024年問題の対策として、適切な価格転換を促しており、価格交渉の実態を把握するために、
    毎年9月と3月に調査を実施して結果を公表しています。

    参考:
    中小企業庁「価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果」 
    https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/follow-up/

    価格交渉に応じない企業は名前を公表されるため、これまで価格交渉に応じてもらえなかった状況が改善傾向となって、
    今後は適切な価格交渉が実施しやすくなります。
     
       

    4.まとめ



     
    今回は、物流業界の2024年問題が建設業界にどのような影響を及ぼすのかについて解説しました。
    2024年4月からは、物流業界も建設業界も法律の猶予期間が終了し、違反をすれば罰則を受けます。

    両業界ともガイドラインを作成してルールを順守する準備を進めていますが、2024年問題の解決策は人手不足の解消です。
    そのために、発注者に対して適切な価格交渉を行い、業務のDX化や待遇改善に取り組みましょう。
  • 円形足場とは?組み立て方や注意点を解説
    私たちが普段目にする建物のデザインは、その多くが直線的なデザインです。
    直線的なデザインは、建物をつくりやすいということ以外に、容積を大きく取れるメリットがあります。

    一方、代表的なものとして石油タンクやガスタンクなどの用途を重視した構造物では、
    曲線的なデザインが採用される場合があります。
    石油タンクやガスタンクは、外気の温度により内容物が膨張することがあるため、
    その圧力を均等に受けられる丸い形となっています。

    またホテルや商業施設などにも曲線を活かしたデザインが多く見られるようになりました。
    これら円形状の構築物を建設する場合においても、足場が必要となります。

    今回は、これら円形状の建築工事に利用される円形足場について解説します。
     


    ▼ 目次
     1.円形足場とは
       2.  円形足場の組み立て方
            2-1.  円形足場ではCADを利用し割り付けを行うと便利
            2-2.  足場を安定させるため建地は敷板の中央に
            2-3.  建地を伸ばした際の安定性を重視して設置する
            2-4.  足場の骨格を決める腕木
            2-5.  足場の固定は最重要ポイント
            2-6.  三角形の隙間にうまく足場板をはめる
        3.  円形足場を設置する際の注意点
           3-1.  落下防止の対策
         3-2.  足場を変更した場合の安全点検が重要
           3-3.  他の職人からの注文を確認する
       4まとめ

    1.円形足場とは

     

    一般的な足場は、最長1800㎜から300㎜刻みで直線的な形状のため、
    円形状に足場を組む場合は、直線的な足場板を細かく組み合わせなくてはなりません。

    円形の構造物に対して足場を組む場合は、建物の外壁を傷つけずに直線的な板を円形に設置し、
    さらに安全性を確保しながら作業性を上げることができるかどうかが重要です。

    2.円形足場の組み立て方

    円形足場を組み立てる上で問題となるのが、直線的な足場資材をどのように円形状に構成するかということです。
    ここでは、円形足場の組み立て方について説明します。

    2-1.円形足場ではCADを利用し割り付けを行うと便利



    円形足場を組み立てる準備として、足場の割り付けを行います。
    通常の足場であれば、割り付けは構築物の図面から計算することができますが、
    曲線的な構築物の場合は計算だけで足場を割り付けることは難しいでしょう。

    複雑な曲線に対して足場を割り付ける場合は、CAD(Computer Aided Design)を利用すると便利です。
    CADとはコンピュータ支援設計と言われる、コンピュータ上で図面を描くソフトウェアのことです。

    CADに図面を読み込み、円形状の外壁に対して既定サイズの足場板が接線と平行になるよう設置することがポイントです。

    CADを使うことで、図面上に描かれている円弧に対して簡単に接線を引くことができ、
    足場板の中心が接点になるよう配置することが可能です。

    配置した1枚目の足場板を基準に、建物を囲うように割り付けを行います。
    2枚目以降は建物側の角部が隣の板と重なるようにすると、足場と足場の間に三角形の隙間ができます。
    この時点では、この三角形の隙間は無視して割り付けを進めて下さい。

    最後の1枚が寸法的に収まらない場合は、サイズを変更して割り付け、
    全体を見てバランス良く足場板が配置されていれば割り付けは終了です。

    2-2.足場を安定させるため建地は敷板の中央に


    割り付けができたら、実際に現地で足場を組みます。
    まずは、足場の土台となる敷板の設置です。
    直線的な足場であれば、建物に対して平行に設置すれば良いですが、
    円形足場の場合は足場を割り付けた時のように円弧状に設置する必要があります。

    足場の割り付けを参考に、建地の下に敷板が来るように設置しなければなりません。
    敷板については細かな位置を調整する必要はありませんが、
    できるだけ建地が敷板の中央付近に来るように配置すると足場が安定するでしょう。

    2-3.建地を伸ばした際の安定性を重視して設置する


    敷板を設置後、建地の位置を決めるためジャッキベースを配置します。
    ジャッキベースは割り付けを参考に、ある程度調整ができるところに配置しましょう。

    ジャッキベースは、後の作業で建地の位置を微調整する必要が考えられるため、
    ここでは厳密な位置調整をする必要はありません。

    ジャッキベースに建地を設置したら、1段目の建地の高さを合わしましょう。
    足場を上に伸ばしていった時に、接合部が合っていないと不安定な足場となる可能性があります。

    円形足場の特徴として、通常の足場は1本の建地を左右で共有していますが、
    放射状の円形足場は外側の建地を、あらためて単管や腕木などで連結する必要があります。そのため事前に高さや位置を合わせておくことが大切です。

    2-4.足場の骨格を決める腕木


    足場板の幅に設置した2本の建地は「腕木」により連結します。
    さらに筋交いを付けることで、足場の骨格となり安定した状態になります。

    骨格が安定した状態で、実際の建物の外壁と足場の位置関係を確認しましょう。

    2-5.足場の固定は最重要ポイント


    足場の骨格ができたら、2段目以降の組み立てを行い、上に伸ばしていきます。
    この時に隣の建地と別途単管等で連結して、足場が倒れないように固定します。

    隣の建地と連結できない場合は、アウトリガーの取り付けや敷板などにジャッキベースを直接固定するなどで、
    足場全体が安定するように補強しましょう。

    2-6.三角形の隙間にうまく足場板をはめる


    建地に足場板を設置する際、割り付け時に三角形となっていた隙間にも、
    足場板を取り付ける必要があります。

    資材メーカーによっては、隙間の三角形に合う専用の足場板が提供されている場合もあります。
    しかし形が合わない場合は、足場板がはみ出てしまうため、通常の足場板を番線と呼ばれる針金などを使って固定します。

    番線は昔から足場の作業で使われている消耗品で、結束や緊結に使われているものです。
    昔は木材の足場の柱や梁の固定に番線を使用していました。
    現在の金属製の足場においても番線を使う機会は多くあります。

    最後に足場板のガタつきが無いことを確認し、隙間が広いところは層間ネットを設置して完成となります。

    3.円形足場を設置する際の注意点

     
    円形足場を設置した場合、注意点がありますので説明します。

    ・落下防止の対策
    ・足場を変更した場合の安全点検が重要
    ・他の職人からの注文を確認する


    3-1.落下防止の対策


    円形足場の注意点として、足場と建物の隙間が一定ではないことです。
    円形足場で安全に作業を行うために、足場の隙間に対しては落下防止対策の措置が必要です。

    落下の危険がある隙間については、層間ネットなどを設置して落下防止対策をしましょう。

    3-2.足場を変更した場合の安全点検が重要

    足場で作業を行う前に作業前点検を行うことが義務付けられています。

    円形足場では建物との距離が一定ではないため、一時的に足場板を外して作業を行う場合があります。
    足場の取り外しや取り付けは、足場の変更となるため作業開始前には必ず点検が必要です。

    3-3.他の職人からの注文を確認する

    円形足場に限らず完成した足場は、利用する鉄筋工や鍛冶工などの職人が
    安全かつ効率的に作業できることが求められます。

    特に建地が密集するところでは職人が作業しづらく、
    足場を組んだ後から「建地が邪魔で作業がやりづらいから修正して欲しい」と言った注文を受ける可能性もあります。

    作業に影響しないように足場の割り付け時から職人と打ち合わせをして、
    事前に依頼事項を反映するようにしましょう。
     
       

    4.まとめ


     
    今回は円形足場について解説しました。
    実際には、特別な理由がない限り円形状構築物は多くありません。
    しかし、足場の組み立て作業は、作業に必要となる形に合わせて組まなければならないため、
    今回紹介した円形足場の組み方を参考にして下さい。
  • 足場業界の今後や将来性は?現状から考える今後の展望   
    2018年6月に働き方改革関連法案が成立し労働基準法が改正されました。
    2019年から建設業など一部の業界を除き施行された、改正労働基準法の大きなポイントは、
    時間外労働時間の上限規制が明確に定められたことです。

    建設業や運送業、医師などに対しては法の適用に猶予期間が設けられていましたが、
    2024年4月以降は解除され、法律を遵守しなければなりません。

    一方、2020年に世界へ感染が広がった新型コロナウイルスは、私たちの生活に大きな影響を及ぼしました。
    感染拡大を防ぐため、人やモノの流れが停滞して経済活動に大きな影響を与えたのです。

    株式会社帝国データバンクの調査によると、
    2023年9月時点で2020年2月以降新型コロナ関連によって倒産した企業の累計は6600件以上にのぼります。

    今後、建築業界を取り巻く環境はどうなるのでしょうか。
    今回は、足場業界の将来性にも大きく関係する建築業界の現状から、今後の展望について解説します。

    ▼ 目次
     1.建設業界の現状
            1-1.  資材高騰
            1-2.  2024年問題
            1-3.  倒産件数増加
       2.  足場業界の将来性は?
       3.  今後に備えて準備すること
           3-1.  新3Kの実現
         3-2.  DX化による業務効率を上げる
           3-3.  資格取得制度を確立する
       4まとめ

    1.建設業界の現状

     
    建築業界の主な課題として、次のことが挙げられます。

    ・資材高騰
    ・2024年問題
    ・倒産件数増加
     

    1-1.資材高騰

    国土交通省が2022年6月に公表した「最近の建設業を巡る状況について【報告】」によると、
    建設事業者へのヒアリングで「資材価格高騰による影響が出ている」と回答した事業者は約90%、
    そのうちの約60%が「影響が大きく出ている」と回答しています。

    また、一般財団法人建設物価調査会のデータによると、東京における2022年3月時点の建設資材物価指数は、
    前年同月と比較して14.9%増加しています。

    足場工事や建築に欠かせない鉄骨に使用する鋼材も価格が高騰し、
    この現象は「アイアンショック」と呼ばれています。

    アイアンショックが発生した原因の一つは、鋼材の急激な需要拡大です。
    新型コロナウイルスの影響で一時は減少した鋼材の需要が、世界の経済活動が徐々に戻り始めると同時に拡大し、
    世界規模で鉄鉱石不足となり、鋼材の価格高騰につながりました。

    1-2.2024年問題



    改正労働基準法の猶予期間が終わる2024年4月以降、時間外労働は原則月45時間以内、
    年360時間以内と制限がかけられます。

    大手企業をはじめとする各社は、2019年から働き方の工夫に取り組んでおり、
    就業管理を厳密化するなどして、法律を遵守する体制を整えつつあります。

    現場で働く人が無理な長時間労働を強いられることが無くなり、
    企業のイメージアップにつながるチャンスとなるかもしれません。
    一方、工事現場の日程管理や作業指示などを行う施工管理業務については、
    依然として担当者の負担が大きく、さらなる改善が必要です。


    1-3.倒産件数増加

    帝国データバンクが実施した調査では、2022年度の建設業における倒産件数は1291件でした。
    2020年度の倒産件数1167件や2021年度の1084件と比べると約10%から20%増加しています。
    その主な要因は「物価高騰」と「人手不足」とされています。

    新型コロナウイルスの感染拡大により工事の遅れや新規工事の受注が伸びなかったことに加え、
    ロシアによるウクライナ侵攻、円安などの影響で、鉄骨を始めとする様々な建設資材が高騰しました。

    資材が高騰しても入手できれば良い方で、1割以上高価な資材に変更しても予定通りに届かないといった事態もありました。
    このような事態によって、工事を中断しなければならない状況が続き、
    建設会社の負担が大きくなったことで倒産件数が増えました。

    また、建設業界の課題である人手不足も倒産の原因となっています。
    労働年齢の高齢化や給与水準の問題に加えて、建築工事の需要拡大により、
    施工管理者などの現場を管理する人材が不足している状況です。

    2.足場業界の将来性は?

    建築業の一部を担っている足場業界の将来性はどうでしょうか。
    建築業界とは切り離せない足場業界も、同様の課題があります。


    資材高騰については、足場工事で使用する資材の多くは、
    国内で賄っているため、円安による影響は少ないと考えます。

    深刻な問題は人手不足で、専門の職人(とび職)の高齢化による退職と若手の離職率の高さから、
    足場業界は慢性的な人手不足に陥っています。

     

    3.今後に備えて準備すること

      
    人手不足を解消するためには、現状分析が必要です。
    一般的に人手不足の中には「人材不足」も含まれているようです。
    人手不足は単に働き手が足りていない状態のことで、
    人材不足は必要な能力やスキルを持った人がいない状態のこと言います。

    足場の作業を行うとび職人は、専門的で高度な知識と技能が必要なため、一定期間の経験が必要です。
    ここでは、人手不足と人材不足に対応する方法について解説します。

    3-1.新3Kの実現

    人手不足・人材不足対策として、新3Kの取り組みがあります。
    新3Kとは、「給与・休暇・希望」の頭文字Kのことです。

    国土交通省は、建設業全体の働き方や待遇を支えて行くために、
    新3Kを掲げました。昔の3Kは「きつい、汚い、危険」とネガティブなイメージでしたが、
    新3Kによってイメージを払拭する動きがあります。

    給与については、一般社団法人日本建設業連合会から「労務費見積もり尊重宣言」が発表され、
    建築業全体の賃金を全産業の平均レベルに近づけるための取り組みを行っており、
    休暇については、働き方改革関連法案によって労働環境の改善に向かっています。

     

    3-2.DX化による業務効率を上げる

    次の課題として業務のDX化があります。
    足場作業を円滑に行うためには、作業者も必要ですが管理・監督者も必要です。

    現場の作業が終わってから事務所に戻って仕事をしていては、管理・監督者の時間的な負担が増えるばかりです。
    そこで、DX化による業務の効率化が必要になります。

    代表的なDX化としてはクラウドシステムの導入でしょう。

    資材発注や会計処理、工事の進捗報告などクラウドシステムで行うことで、
    現場にいてもスマホやタブレットを使って事務作業を行うことができます。

    また2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入され、
    取引先に個人事業主などの免税事業者が多い場合、会計処理を正確に行わないと税負担が大きくなる可能性があります。

    2024年1月からは電子帳簿保存法が改正され、請求書などは印刷して保管することが認められなくなります。
    今までの会計システムでは対応できない場合、新たな制度に対応したシステムの導入を検討しなければなりません。

    DX化によって現場から発注や経費処理、進捗報告などをできるようにして、人手不足・人材不足に対応する必要があります。


    3-3.資格取得制度を確立する



    とび職人になるには、「足場の組立て等特別教育」や「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」などの資格取得は不可欠です。
    また一人前の職人になるには、「足場組立解体作業主任者」や「鳶技能士」などの資格も必要となります。

    資格取得にかかる全費用を負担する、資格取得者による後輩の育成など、
    会社側が資格取得に向けてサポートする体制を作ることが重要です。

    4.まとめ

     

    難しい課題もある足場業界ですが、今後は現場での長時間労働規制や、DX化による業務効率の改善など、
    働きやすく魅力的な仕事になる可能性を大いに秘めているのも現実です。
    若手の育成も含め、誰もが働きやすい業界へとイノベーションし続けていくことが、
    足場業界の展望を明るくするのではないでしょうか。
  • マンション大規模修繕工事の市場動向は?今後の課題や予想について
    日本のマンションの建築は、大きく分けると2つの時期に集中的に行われてきました。

    1つ目は高度成長期です。日本の高度成長期は、1955年~1973年までの19年間の経済成長のことを言います。
    当時の日本は終戦から10年が経ち、自動車や電気・機械を始めとする産業が、海外からの最新技術を取り入れ、
    急速に経済が発展した時代でもあります。

    急速な経済発展を支えるために、多くの労働者が住むための住宅が必要となったのです。
    そこで国は1955年に日本住宅公団を設立し、画一的な板型RC造の集合住宅が何棟も連なる
    「団地」を日本全国の各都市に建設しました。

    2つ目はバブル期です。バブル期とは、1980年代後半から1990年代初頭までの好景気だった時代のことを言います。
    バブル期が誕生した背景として、莫大な不動産投資があります。

    当時建築されたマンションの販売価格は、数億円を超えるものも多く、「億ション」とも呼ばれていました。
    そのような高額マンションでも飛ぶように売れていた時代だったのです。

    そして現在では、当時建設した多くの大規模建築物の老朽化が問題となっています。
    そこで今回は、マンションの大規模修繕工事の現状について解説します。


    ▼ 目次
     1.マンションの大規模修繕とは
       2.  マンションの大規模修繕の市場について
       3.  マンション大規模修繕の課題と今後
        4.  マンション大規模修繕が必要な理由
           4-1.  中性化
         4-2.  塩害
           4-3.  アルカリ骨材反応
         4-4.  凍害
       5.  マンション大規模修繕での足場の必要性
       6まとめ

    1.マンションの大規模修繕とは

     
    マンションのような大規模な建築物には、一般的に鉄筋コンクリートが用いられます。
    鉄筋コンクリートとは、鉄筋を組んで周囲をコンクリートによって固めることで、
    強固な柱や床などを形成するものです。

    コンクリートは、圧縮に強く引っ張りには弱い材料です。
    一方、鉄筋は、圧縮には弱く引っ張りには強い材料です。
    コンクリートと鉄筋を組み合わせることで、建物に発生する圧縮や引っ張りの力に耐えることができます。

    また鉄筋は錆やすく、熱に弱いという欠点がありますが、コンクリートで鉄筋を覆うことで、
    鉄筋の錆を防止して熱からも守る役割があります。

    鉄筋コンクリートの法定耐用年数は47年とされており、寿命が長いことも大きな特徴です。
    しかし建物には地震や台風など、一時的に大きな力がかかることがあり、
    想定を超える大きな力が加わった場合は鉄筋コンクリートの寿命に影響があります。

    大きな力を受けない場合でも、鉄筋コンクリートのマンションは13年から16年の周期で
    定期的に老朽化した設備や躯体の修繕が必要です。

    マンションには多くの人が住んでいるため、定期的な修繕であってもその工事規模は大きくなり住人に負担がかかります。
    しかしマンションで長い間安心して暮らすためには、定期的に大規模修繕を行わなければなりません。

    2.マンションの大規模修繕の市場について

    高度成長期とバブル期に多くのマンションが建築され、現在もそれらのマンションを維持するために、
    定期的に大規模修繕が行われています。
    高度成長期とバブル期以外にもマンション建築は行われており、今後も新たなマンションが建設されることでしょう。

    国土交通省の審議会である住宅宅地分科会において、
    今後のマンションの管理適正化及び再生の円滑化のあり方について報告がありました。

    その報告の中で、築40年超のマンションは81.4万戸あり、10年後には約2.4倍の197.8万戸、
    20年後には約4.5倍の366.8万戸と高経年マンションが増加するとされています。

    参考:国土交通省「マンション政策の現状と課題」
    https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001313642.pdf

    これらのマンションを維持するためには、定期的な大規模修繕が必要ですが、
    タワーマンションなどの出現により年々修繕の大規模化が進んでいます。

    また修繕工事の専門化や複雑化も進んでいる状況です。
    大規模修繕を必要とするマンションが増加する一方で、修繕工事のできる業者は限られています。

    3.マンション大規模修繕の課題と今後

     
    マンションの大規模修繕工事についてはいくつかの課題がありますが、特に深刻なのが周期的な修繕工事の実施です。

    国土交通省の住宅宅地分科会では、大規模修繕が必要な時期を迎えるマンションに対して、築40年以上のマンションの約4割、
    築30年以上のマンションの約2割が適切な時期に大規模修繕が実施できていない可能性があると報告されています。

    特に築年数の古いマンションについては、所有者の高齢化や管理組合の担い手不足、
    住人の修繕工事実施の同意など様々な問題があります。

    また古いマンションでは空き住戸もあり、修繕工事に必要な費用を準備できないこともあるでしょう。
    大規模修繕を必要とするマンションが増える状況に変わりはありませんが、計画的に修繕工事を行うことが課題となっています。


    参考:国土交通省「マンション政策の現状と課題」
    https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001313642.pdf
     

    4.マンション大規模修繕が必要な理由

     
    多くのマンションは鉄筋コンクリートでつくられています。
    マンションは大きな建物であるため、修繕工事も大規模になります。
    鉄筋コンクリートで建てられているマンションについて、大規模修繕工事が必要な理由を説明します。

    4-1.中性化

    中性化とは、コンクリートのpHが中性化することです。
    施工初期のコンクリートは強アルカリ性であり、鉄筋の腐食を防止する効果がありますが、
    時間が経つとコンクリートの中性化が進みます。コンクリートの強アルカリ性を低下させる要因として、
    酸性雨や熱などがあります。

    建物外壁部のコンクリートは、雨や太陽光の影響を直接受け、
    雨や太陽光に長期間さらされることによってコンクリートが中性化します。
    コンクリートの中性化によってpHが10程度になると、内部の鉄筋が腐食し始めると言われています。

     

    4-2.塩害

    塩害とは、コンクリートに浸透した塩化物イオンによって生じる鉄筋コンクリートの劣化のことです。
    塩化物イオンが内部に浸透し、鉄筋まで到達すると鉄筋を腐食させます。

    海辺の近くや海から離れていても海からの潮風を受けるような高層マンションでは、
    塩害が発生しやすいと言えるでしょう。


    4-3.アルカリ骨材反応

    アルカリ骨材反応とは、コンクリートをつくる時に一緒に混ぜた砂利や砂などの骨材の成分が、
    コンクリートのアルカリ性水溶液と反応して、骨材が異常膨張することです。

    骨材が異常膨張すると、コンクリートにひび割れなどの現象が発生します。
    アルカリ骨材反応によってコンクリートがひび割れてしまうと、コンクリートの強度低下や鉄筋腐食の原因となります。


    4-4.凍害

     凍害とは、寒冷地においてコンクリート内部の水分が凍結して膨張する現象です。
    長年の間、凍結と融解を繰り返すことによりコンクリートの劣化が進行します。

    マンションで凍害が発生しやすい部位としては、突出部や水が流れる経路、日射が当たる南面に発生する傾向にあります。
    凍害による劣化が進行すると、ひび割れの進行以外にコンクリートのはく離・はく落が発生して、安全性などに影響を及ぼします。
     

    5.マンション大規模修繕での足場の必要性

     
    マンション大規模修繕では、鉄筋コンクリートの劣化状態を確認して、
    劣化が進行する前に補修しなければなりません。

    コンクリートの劣化は主に外壁側から始まるため、修繕工事も外壁が中心となります。
    そのためマンションの大規模修繕工事には足場が必要となります。

    マンションの大規模修繕工事で組む足場自体は、新築時と大きな違いはありませんが、
    修繕工事の際には住人に対する配慮が必要となります。

    特に配慮しなければならないことは防犯対策です。
    マンション大規模修繕工事で建物全体に足場を掛けると、高層階の部屋でも容易に外から侵入することが可能になります。

    実際にオートロック付きのタワーマンションで、大規模修繕工事が行われた時に足場を利用した窃盗事件が発生したことがありました。

    大規模修繕工事時における窃盗事件防止の対策として、足場の出入り口を施錠管理したり防犯カメラを設置したりして、
    工事関係者以外は足場に立ち入りできないようにする必要があるでしょう。

    最近では、防犯ニーズの高まりから養生枠の需要も増えています。



    中央ビルト工業:「スカイフェンス」
    https://premium.ipros.jp/chuo-build/product/detail/2000355805/?hub=163&categoryId=58317

    不審者が建物内に侵入するのを防いだり、外部からの視線を遮断したりするためにも、しっかりと養生を行うことが大切です。

    6.まとめ


    高度成長期やバブル期に建築されたマンションの中には、
    老朽化で解体されているものもありますが、現存するものも多くあります。

    今後もマンション建設は行われるため、定期的に大規模修繕の必要なマンションは増加する傾向です。
    マンションに限らずどの建物についても、定期的に修繕する必要がありますが、
    マンションの場合は建物自体が大きいため、希望する時期に工事ができない可能性があります。

    マンション大規模修繕における足場工事のニーズは今後も増加傾向となるでしょう。
    そのため、多様なニーズに対応できる施策が求められています。
  • 【足場の歴史】足場工事はいつから始まった?
    日本の建築物は、直線的な材料である柱と梁を組み立ててつくられたものが多くあります。
    柱と梁を組み立てる工事において、高いところで作業を行う場合は、足場が必要となります。
    古くから建築物を建てる場合には、当然足場を組んで作業をしたことでしょう。
    今回は、足場の歴史について解説します。


    ▼ 目次
     1.そもそも足場とは何か
       2.  足場工事が始まったのはいつから?
       3.  足場の歴史
           3-1.  飛鳥~奈良時代
         3-2.  平安時代
           3-3.  鎌倉時代
         3-4.  江戸時代
         3-5.  近代
       4まとめ

    1.そもそも足場とは何か

     

    そもそも足場とは、人の足が乗る場所のことです。
    建設現場では、足場に乗って作業者が移動や作業を行います。

    人が作業や移動をするために、ある程度の強度は必要ですが、建設工事が終了すると解体されるため、
    建物に使われる柱や梁とは違って、簡易的なつくりとなっています。
    足場に求められる機能として、人が乗って作業や移動を行う以外に、組み立てやすく解体しやすいことが挙げられます。

    2.足場工事が始まったのはいつから?

    足場工事がいつから始まったという明確な記録がありません。
    明確な記録はありませんが、現存する建築物から推測されています。
    現存する日本最古の建築物は、奈良県にある法隆寺です。

    法隆寺は世界最古の木造建築で国宝であり世界遺産でもあります。
    法隆寺には、高さ32.5メートルの五重塔があり、建築時には大規模な足場を組んで工事が行われたことでしょう。

    そのため法隆寺が建てられた飛鳥時代には、本格的な足場工事が行われていたと推測されています。
    しかし日本の弥生時代には、高床式倉庫が多く建てられたとされており、それらを建築する時にも足場が必要であったと推測されます。

    高床式倉庫は床が高い位置まで上げられているため、梁や屋根などはさらに高い場所で作業しなければなりません。
    そのため、法隆寺建築以前から足場工事が行われていた可能性はあるでしょう。

    3.足場の歴史

     
    現存する日本最古の建築物である法隆寺が建立された時代から足場の歴史を振り返ってみましょう。

    ・飛鳥~奈良時代
    ・平安時代
    ・鎌倉時代
    ・鎌倉時代
    ・近代

     

    3-1.飛鳥~奈良時代

    西暦700年代の奈良時代の遺構から、建築時の足場跡と見られる「足場穴」が発見されています。
    奈良時代の建築物は、地面に直接柱を立てるのではなく、礎石の上に柱を立てるようになりました。

    礎石を柱の下に設置することで、より大きな重量を柱で支えられるようになり、
    高さがある大きな建物を建てやすくなりました。
    建物が高くなると高所での作業が必要となり、作業用の足場が必要となったのです。

    足場の材料は主に竹や木材で、日本では竹や木材が豊富にあったので、足場工事が普及したと考えられています。
    また奈良時代には清水寺も建てられており、「清水の舞台」の舞台をつくる時にも大規模な足場が組まれていたことでしょう。

     

    3-2.平安時代

    西暦700年代後半は、平安時代になります。
    平安時代になると寝殿造りと呼ばれる建築物が多くつくられました。
    寝殿造りは、高い建物ではありませんが、東、西、北に対屋 (たいのや) を設け、廊でつなぐ構造となっています。

    決して高くはありませんが、柱に長い梁を組むため、横方向に長い足場が必要です。
    平安時代においても、足場工事は行われていました。
    平安時代に書かれた書物として、竹取物語があります。

    この竹取物語の中に、「高いところに登る」という意味の「麻柱(あなない)」という言葉が使われています。
    「まめなる男二十人ばかり遣はして、あななひに上げすゑられたり。」と詠まれており、
    意味は「忠実な家来の男を二十人ばかり派遣して、高い足場を組んでその上に登らせた。」ということだそうです。
    [参考:日本建築史の研究・福山敏男/総芸舎](平城宮、山田寺他)

    当時多くの作業者が高い足場の上で、梁の組み立て作業を行っていたことが想像できるでしょう。

    3-3.鎌倉時代

    西暦1100年代後半は、鎌倉時代になります。
    鎌倉時代には、仏教に多くの宗派が生まれ、建築の分野にも様々な変化がありました。
    鎌倉時代の代表的な建物として、東大寺の南大門があります。

    東大寺の南大門は、高さが25.46メートルあり、国内最大の山門です。
    南大門は中国から伝わった建築様式で建てられており、
    上層と下層の両方に屋根がある二重門と呼ばれる2階建ての門です。

    南大門には21メートルもある柱が18本使われていて、柱は屋根裏まで達しています。
    南大門の柱や梁を組み上げる時に、足場は利用されていたでしょう。

    3-4.江戸時代



    出典:国立博物館所蔵品統合検索システム 
    https://colbase.nich.go.jp

    西暦1600年代は、江戸時代になります。
    奈良時代から1000年近く経ちますが、足場は長い丸太を使ったものに変わりはありません。

    徳川家康が江戸幕府を開き、多くの人たちが江戸に集まってきました。
    江戸には様々な仕事が増え、足場の組み立てや足場の上で作業する人たちのことを鳶職と呼ぶようになったのも江戸時代です。

    鳶職は高い場所で作業を行うこと以外に、火災の現場でも活躍しました。
    鳶職は普段は建築現場にいるので、建物の構造に詳しいです。
    江戸時代の消火活動は、破壊消火と呼ばれるように、火を消すのではなく延焼が広がらないように、
    延焼先となる建物を先回りして解体しました。

    鳶職は火災が発生するといち早く現場に行って、延焼先の建物を手際よく解体します。
    江戸では人口増加とともに鳶職も多くいました。大工、左官、鳶職は「華の三職」と言われて、人気の仕事だったそうです。

    消火活動も行っていた鳶職が着ていたものを火事羽織と呼んでいました。
    火事羽織は木綿地を刺し子にしたもので、表はシンプルな籠目模様(かごめもよう)ですが、
    裏地には派手な描絵模様(かきえもよう)が描かれています。

    火消し作業が終わると、羽織を裏返しにして、
    地味な籠目模様から派手な描絵模様を見せびらかしながら江戸の町を練り歩いたと言われています。

    3-5.近代


    日本の足場の歴史が大きく変わったのが、西暦1900年代中期です。
    明治時代以降、日本に海外の発展した技術が多く伝わりました。

    その中でも製鉄技術については海外の生産性の高い技術によって、鉄が大量に生産できるようになりました。
    鉄を大量に生産できるようになると、それまで木材を材料としていた製品が、丈夫な鉄製に変わっていったのです。

    そして1954年、東京大手町にある東京産業会館での建築工事で、日本で初めて鋼管の足場が用いられました。
    この時期から丸太の足場から鋼管の足場に変わってきました。

    また足場の種類もくさび式足場や枠組み足場など、工事現場に合わせた足場が組めるようになったのです。
    長年利用されていた丸太の足場ですが、丸太そのものの上を歩いていたため、作業者は不安定な状態で作業を行っていました。

    そのため、足場からの転落事故も頻繁に発生していたのです。
    丸太の足場から鋼管の足場に変化したのに合わせて、足場に幅を持たせるようになったのもこのころから行われるようになりました。
    現在足場には手摺や中さんの設置が義務付けられており、安全で安心な足場へと発展したのです。


    4.まとめ


    日本の足場は日本建築の歴史と共に歩んできました。
    世界的には、紀元前2500年にエジプトのピラミッドの建設で足場が利用されていたという説があり、
    紀元前214年に中国では万里の長城の建設でも足場が使われていたと言われています。

    日本の建築技術の多くは中国から伝来しており、大きな影響を受けて発展してきました。
    史実としての記録はありませんが、日本でも弥生時代くらいから足場を使った建設工事が行われていたことでしょう。

    昭和初期までは、丸太の足場に大きな変化はありませんでしたが、
    現在では軽くて丈夫かつ自由に組める便利な足場が利用されています。
    建築技術は今後も進歩が期待されているため、新たな建築技術にあった足場の発展を期待しましょう。
  • 足場屋は大変?仕事できついといわれるポイント7選!
    最近聞かなくなった言葉ですが、「3K」という言葉があります。
    「3K」とは、1990年頃に流行した言葉で、「きつい・汚い・危険」の頭文字を取った言葉です。

    1990年頃の日本は、バブル景気が頂点に達し、就職も超売り手市場でした。
    超売り手市場だったため、「3K」と呼ばれる職種は敬遠される傾向がありました。

    現在でも「3K」と呼ばれる職種があり、建築業界は「3K」の代表的な職種とされています。
    建築業界の中でも、高い場所に真っ先に上がり、安全に作業を行うための足場を組み立てる職人の仕事はきつく・危険な作業です。

    今回は、足場屋の仕事内容を説明し、きついと言われるポイントについて解説します。


    ▼ 目次
     1.足場屋の仕事内容
       2.  足場屋の仕事できついこと7選
           2-1.  朝が早い
         2-2.  材料が重い
           2-3.  上下関係が厳しい
         2-4.  天候の影響を受ける
         2-5.  危険な高所作業
         2-6.  時間に追われる
         2-7.  現場が終わっても次の日の準備がある
       3.  女性には足場屋の仕事はきつい?
       4.  足場屋はきついけど儲かる?
       5.  まとめ

    1.足場屋の仕事内容

      
    足場屋の仕事内容は、建築作業を行うための足場を組み立て・解体することです。
    足場を組み立てるためには、事前に足場を組み立てる現場を確認しておく必要があります。

    理由は、建築する建物と工事で使用できる敷地を確認して、どのような足場を組むのかを決めなければいけないからです。
    またどのような足場を組むかだけでなく、足場の資材を運搬するトラックの位置や資材の搬入経路などの確認も必要です。

    足場を設計する時に行うのが、足場の割り付けです。
    足場の材料には規格があり、決まった寸法となっています。
    決まった寸法の足場部材を、建築する建物に合わせて組まなければなりません。

    建物と足場の隙間が適切になるように、足場屋は足場の割り付けを行います。
    建築工事が完了した後は、足場を解体しなければなりません。
    解体する時も、トラックの位置や資材の搬出経路を確保する必要があります。

    建物が無かった時は資材を搬入できたが、建物が完成した後に資材が搬出できないということはあってはなりません。
    建築工事を効率的に行うために、足場屋の役目は重要と言えます。


    2.足場屋の仕事できついこと7選

     
    ここでは、足場屋の仕事できついことについて次の7つを紹介します。
    ・朝が早い
    ・材料が重い
    ・上下関係が厳しい
    ・天候の影響を受ける
    ・危険な高所作業
    ・時間に追われる
    ・現場が終わっても次の日の準備がある

     

    2-1.朝が早い



    多くの建築作業は、日中に行われます。
    足場は建築作業を行うのに必要なため、早朝から作業を開始することが多いです。
    他の職人が集合する前から作業を行い、他の職人が集合した頃には作業を終えていなければならないこともあります。

    夏場は日の出が早いので早朝から作業して1日の作業時間を長く取れますが、
    冬場は日の出が遅いので暗いうちから作業準備を行い、明るくなったら直ぐに作業に取り掛からなければなりません。

     

    2-2.材料が重い

    足場を組むために多くの資材を使用します。
    一つひとつの資材は人が持てる重さではありますが、一つひとつ運搬していては効率が良くありません。

    作業の効率を上げるにはまとめて運ぶ必要がありますが、資材をまとめると重量が重くなります。
    また、資材を高い場所に持ち上げることも必要です。持ち上げる作業は、体にとても負担がかかります。

    作業中に足場の材料を落としてしまった場合は、大事故になる可能性もあるので、
    資材の取り扱いは無理をしないで慎重に行わなければなりません。

    2-3.上下関係が厳しい

    足場屋の仕事の多くは、高い場所での作業となるため危険が伴います。
    一瞬の気の緩みが大事故につながるからです。

    危険が伴う作業を集団で行うためには、強いリーダシップが欠かせません。
    経験の浅い作業者が危険な作業をしている時には、厳しい言葉で注意されます。

    親方と呼ばれるような責任者にとって、作業者は家族のような存在であるため、
    作業者がケガをしないようにと思う気持ちが、つい厳しい言葉になってしまうようです。

    2-4.天候の影響を受ける

    足場屋に限らず、屋外で作業を行う建築工事は、天候の影響を受けます。
    足場工事においては、雨や風が強い場合は作業を中止することもあります。
    雨が降っていたり、風が強く吹いていたりすると、安全に作業ができないからです。

    しかし、小雨や少し風の強い日などは作業を実施するという判断もあるでしょう。
    雨や風以外にも、冬の寒さや夏の暑さも作業者にとって大きな影響があります。

    2-5.危険な高所作業


    足場屋は安全に作業を行うための足場を組む職人です。
    足場屋が作業を行う時は、当然ですが足場がありません。

    安全な足場の無い中で、命綱を頼りに作業を行います。
    安全に作業を行うためのルールはありますが、足場屋は危険が伴う高所で作業を行わなければなりません。

    足場の高さには上限は無く、高さが数メートルの場合や数十メートルの場合、
    さらには数百メートルということもあるでしょう。

    2-6.時間に追われる

    足場の組み立て作業は、建築作業の最初に行われる工事です。
    足場の組み立てが終わらないと、次の作業ができません。

    そのため、時間に追われることがあります。
    通常の建築工事では、足場の組み立て作業時間は適正に確保されていますが、
    天候などによる工事の遅れが発生した場合、
    作業者を増やしてでも要求された時間内に完了するように依頼される場合があります。

    2-7.現場が終わっても次の日の準備がある

    足場屋の仕事は、現地で足場を組み立てるだけではありません。
    朝一番から効率よく作業を行うためには、次の日の準備を前日に行わなければなりません。
    1日現場で作業した後、会社に戻ってから、翌日の準備を行って、当日の作業が終了します。

    3.女性には足場屋の仕事はきつい?


    仕事がきつい・危険と言われている足場屋は男性の仕事とされてきました。
    では、女性が足場屋の仕事をすることはできるでしょうか。

    建築業界に限らず、職人とされている仕事については、高齢化が進んでいます。
    60歳以上の作業者も現役で働いている状況です。

    建築業界では、早い段階から高齢者のような体力的に衰えがある作業者に対する対応が取られています。
    例えば、重い資材の荷揚げなどはできるだけクレーンを使ったり、足場の材料に軽量なアルミを使用して重量を軽くしたりと工夫しています。

    また、工事現場の下見や工事計画を立案する仕事もあるので、足場屋の仕事全てがきついということではありません。
    逆に、女性だからこそできるきめ細かい気遣いや繊細さが必要とされる場面もあるでしょう。

    女性だから足場屋の仕事ができないという理由はありません。
    ただし実際に現場作業を行う場合は、男女問わず体力的な負担は大きいということを忘れないで下さい。

    4.足場屋はきついけど儲かる?


    最近では建築業界で「3K」と呼ばれる原因となっている作業は改善されてきました。
    しかし、足場を組み立て・解体する作業は、体力を使います。

    現在でも人手不足の状況は変わりありません。とは言え建築工事が無くなることはありません。
    限られた職人によって工事が行われます。人手が少ない業種となると、忙しくはなりますが収入は上がります。

    足場屋1年目の給料は月20万円程度と言われていますが、7年目くらいで月40万円の収入がある人もいます。
    職人の世界は実力主義で年齢や学歴は関係ありません。
    仕事が確実で速いとなると、数カ月で収入も増えることでしょう。努力次第で儲かる職業です。

    5.まとめ


    足場屋の仕事について解説しました。どのような仕事であっても楽な仕事はありません。
    建築業界では、2000年以前から「3K」と呼ばれるイメージを払拭する取り組みをしてきました。

    その成果もあって、「3K」と呼ばれる状況は大きく改善されています。
    人手不足の状況は変わりませんが、足場屋は努力次第で若くして高収入を得られる可能性がある仕事です。

    ただし、規則やルールを守らないと危険であり、厳しい仕事であることに変わりはありません。
  • 型枠支保工とは?足場との違いや種類を解説
    建築技術は古くからありますが、日本では19世紀末から飛躍的な発展を遂げています。
    その要因となったのが、国内工場におけるセメントの生産です。

    それまでセメントは海外から輸入していましたが、国内でセメントが供給できるようになると、
    コンクリートを使った建築物が多くつくられるようになりました。

    コンクリートは、セメントに水・砂利・砂を混ぜ合わせてつくる建築材料で、建築物の基礎や柱、
    梁や壁といったものに使用されています。

    強度が高いことが特徴のコンクリートですが、引張応力に弱いという弱点があります。
    この弱点を解消するために、コンクリートの中に鉄筋を入れた「鉄筋コンクリート」が大規模な建築物に採用されています。

    この便利な建築材料を使用するためには、コンクリートを流し込む型枠が必要です。
    今回は、コンクリート作業に欠かせない型枠支保工について解説します。


    ▼ 目次
     1.型枠支保工(かたわくしほこう)とは
       2.  足場との違い
       3.  型枠支保工の種類
         3-1.  パイプサポート式型枠支保工
           3-2.  枠組式型枠支保工
         3-3.  軽量支保ばり式型枠支保工
         3-4.  組立鋼柱式型枠支保工
         3-5.  四角塔式支保工(ID-15)
         3-6.  くさび結合式型枠支保工
       4.  型枠支保工を扱うのに資格が必要?
       5.  型枠支保工の計算
       6.  まとめ


    1.型枠支保工(かたわくしほこう)とは

      

    型枠支保工とは、コンクリートを設計通りの形にするために、型枠を組んで支えて保持することです。
    簡単な言い方をすれば、コンクリートを流し込む際に、型枠が崩れないようにすることです。

    コンクリート作業において、生コンクリートを型枠に流し込む時、型枠の内側には大きな内圧が発生します。
    コンクリートの型枠をしっかりと保持していないと、型枠が壊れてしまうこともあり、
    せっかく流し込んだコンクリートがムダになってしまいます。

    コンクリートを流し込んだ時に型枠が壊れてしまうと、流れ出たコンクリートを片付けなければなりません。

    コンクリートを片付けるためには、硬化するまで工事を中断しなければならないのはもちろん、
    硬化したコンクリートを斫って除去しなければならず、その手間もムダになります。
    コンクリート作業を確実に行うために型枠支保工が重要なのです。

    2.足場との違い

     
    型枠支保工とよく間違えられるのが、足場組み立て工事です。
    足場組み立て工事は、作業を行うための足場を組むことです。

    一方型枠支保工は、コンクリートを流し込むための型枠を支えて保持するための作業のことを指します。
    どちらの作業にも、鉄パイプを使用しているため、建設業界以外の人が見ると同じような作業に見えるかもしれません。

    足場組み立て作業は作業者が高所で安全に作業できるようにする仕事に対して、
    型枠支保工はコンクリートを流し込むための型枠を組んで崩れないようにする仕事です。

    3.型枠支保工の種類


    型枠支保工は、主に次の6種類に分類されます。
    ・パイプサポート式型枠支保工
    ・枠組式型枠支保工
    ・軽量支保ばり式型枠支保
    ・組立鋼柱式型枠支保工
    ・四角塔式支保工(ID-15)
    ・くさび結合式型枠支保工


    3-1.パイプサポート式型枠支保工

    一般的に広く使用されているのが、パイプサポート式型枠支保工です。
    パイプサポート式型枠支保工では、せき板・根太・大引き・パイプサポートという部材を用いて行います。

    せき板とは、生コンクリートが硬化するまで、流れ出ないようにするための板のことです。
    せき板の材料は、主に合板が使われていて、自由に加工ができます。

    せき板の表面は、黄色い樹脂が表面処理されたものが多いです。
    表面処理を行うことで、コンクリートの表面が滑らかで綺麗に仕上がるだけでなく、
    コンクリートが硬化した後に型枠を外す作業が容易になります。

    型枠を支持するパイプサポートは、上下2本の鋼管を組み合わせることで、
    型枠に合わせて自由に調節できます。

    3-2.枠組式型枠支保工

    枠組式型枠支保工は、外部足場に使用する門型の資材(建枠)と、その付属部材を用いる支保工です。
    外部足場を流用するため、効率的な工法と言えますが、通常の足場には生じない、水平方法の応力を考慮する必要があります。

    流用する足場については、足場としての応力以外に、型枠を支える応力を考慮した設計が必要です。

    3-3.軽量支保ばり式型枠支保工

    軽量支保ばり式型枠支保工は、高汎用性のある軽量支保はりを使用して行う方法です。
    型枠のせき板を支持する部材として、根太(ねだ)と大引き(おおびき)があります。

    型枠支保工において根太とは、せき板に接する部材で鋼管や単管パイプ、時には木材を使用する場合があります。
    大引きとは根太を支える部材で、型枠支保工の場合は9センチメートルの角材が使われることが多いです。

    軽量支保ばり式型枠支保工は、主に鉄筋コンクリートづくりの建築物において、
    床の荷重を支える構造床(スラブ)を打設する時に使用されます。

    3-4.組立鋼柱式型枠支保工

    組立鋼柱式型枠支保工は、H形鋼やI形鋼などの様々な断面の形を持つ形鋼の鋼材を現地で組み立て、
    支柱として用いる型枠支持工です。
    1本あたりの許容荷重が大きい材料を使用するため、主に土木作業の工事で使用されます。

    3-5.四角塔式支保工(ID-15)


    四角塔式支保工は、6点の基本部材で構成されており、
    クレーンで吊り上げることのできる支保工です。

    クレーンで吊り上げることができるため、組み立て後に移動することができ、
    作業しやすい場所で組み立てた後に移動することによって、作業効率が向上し工期短縮が可能です。

    許容荷重についても最大24トンもあるため、部材と部材のスペースを広く取れることも特徴です。

    3-6.くさび結合式型枠支保工

    くさび結合式型枠支保工は、支柱1本あたりの許容荷重が6トン程度と大きく、建築、土木工事を問わずに対応できる方法です。

    くさび結合式型枠支保工は、くさびによって簡単に組み立てることができ、使用する工具もハンマーのみで行えます。
    組立てや解体作業が迅速にできることが特徴です。各メーカーからは、システム支保工として多くの種類の製品が販売されています。

    4.型枠支保工を扱うのに資格が必要?



    型枠支保工を行うためには、型枠支保工の組立て等作業主任者という国家資格が必要です。

    型枠支持工を扱う場合は、必ず資格を持った作業主任者の選任が必要です。
    型枠支保工の組立て等作業主任者の資格を取得するためには、
    厚生労働省が認可した団体の型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習を修了する必要があります。
    受講資格は、次の通りです。

    ・型枠支保工の組立て又は解体に関する作業に3年以上従事した経験を有する者
    ・大学、高等学校又は中等教育学校において土木、建築に関する学科を専攻して卒業した者で、
    その後2年以上型枠支保工の組立て又は解体に関する作業に従事した経験を有する者

    引用:建設業労働災害防止協会 岡山県支部 
    型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習 

    https://www.kensaibou-okayama.jp/skil-list/940/

    受講するためには、受講資格を証明する書類が必要です。講習の内容と時間は次の通りです。

    ・型枠及び型枠支保工の組立て、解体等に関する知識(7時間)
    ・工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識(3時間)
    ・作業者に対する教育等に関する知識(1.5時間)
    ・関係法令(1.5時間)
    ・修了試験(1時間)

    合計14時間の講習であり、2日間に渡って行われます。

    5.型枠支保工の計算


    型枠支保工を行うためには、国家資格も必要ですが、コンクリート打設時の強度計算に関する知識も必要です。

    強度計算を行うことによって、せき板・根太材・大引き材の部材を選定します。
    普通コンクリートの比重は約2.3トン/立方メートルあり、コンクリート打設時は型枠がこれらの重量を支えなければなりません。

    さらに生コンクリートの状態では、たくさんの水分を含んでいるため、比重以上の応力が発生し、
    スラブを打設する時は全ての重量が型枠にかかります。
    また、強度計算はコンクリート打設時の衝撃なども考慮する必要があるため、型枠支保工には高い専門知識が求められます。

    6.まとめ



    近代建築において型枠保持工の役割はとても重要です。
    コンクリートをしっかり支えられる型枠を組み上げなければなりません。

    コンクリートを流し込んだ時に型枠が壊れてしまうと、大きな損害が発生するだけでなく、
    作業の安全性にも影響があります。

    型枠支持工になるには国家資格が必要ですが、様々な形状の型枠を組むためには、
    型枠の強度計算方法についても理解しておくと良いでしょう。